体外受精

2022.11.02

AIスコアリングは正倍数性胚率と相関する(Reprod Biomed Online. 2022)

はじめに

タイムラプスは胚を取り出さずに連続観測することで、温度などの環境変化を最小限にし、胚発生を向上させるとされています。同時に、大量のmorphokineticデータを収集することが可能であり、胚選択と継続妊娠率向上に寄与する可能性を秘めています。最近では、胚盤胞移植後の妊娠予測にAIが広く研究されています。タイムラプスの全てにAIスコアがついているわけではありませんが、導入しているクリニックも増えてきています。 
本論文では、胚盤胞の従来の形態評価であるGardner分類、形態と時間評価を組み合わせたKIDScore Day5 ver3、AIスコアリングのiDAScore® v1.0 modelが、正倍数性胚とどのように相関するか検討した国内の報告をご紹介いたします。 

ポイント

胚盤胞の評価法として、Gardner分類、Vitrolife社のEmbryoscopeタイムラプスを用いたKIDScore Day5 ver3、AIスコアリングのiDAScore® v1.0 modelの3つの方法は、いずれも正倍数性胚率と相関を示しました。各評価法に優劣はありませんでしたが、複数の評価法を組み合わせて使用することにより、より効果的な胚選択が可能になる可能性が示唆されました。

引用文献

Keiichi Kato, et al. Reprod Biomed Online. 2022. DOI:10.1016/j.rbmo.2022.09.010

論文内容

本研究は、着床前遺伝学的検査(PGT-A)を施行した834名の女性(平均年齢:40.5±3.4歳)を対象としたレトロスペクティブ研究です。対象者の卵から採取した3,573個の胚盤胞に対してPGT-Aを実施しました。 
対象者を年齢別に5グループ(35歳未満、35~37歳、38~40歳、41~42歳、42歳以上)に層別化し、以下の3つの評価法が正倍数性胚率とどのように相関するかを検討しました。 
1. Gardner分類(従来の形態評価) 
2. KIDScore Day5 ver3(形態と時間評価を組み合わせた評価) 
3. iDAScore® v1.0 model(AIスコアリング) 

結果

Gardner分類、KIDScore Day5 ver3、iDAScore® v1.0 modelの評価スコアが低下するにつれて、正倍数性胚率は有意に低下しました。 
多変量ロジスティック回帰分析の結果、すべてのモデルにおいて、スコアが高いほど正倍数性胚率と有意に相関していました(P < 0.05)。一方、3つのモデル間では有意な差は認められませんでした。

私見

当院でも導入しているAIスコアリングです。 

AIモデルは、AIが何を評価しているかが完全には解明されていない反面、培養士の主観的評価やその評価のばらつきという問題を払拭できる可能性があります。業界でよく指摘されている「クリニック間で形態評価が一致しない」という問題の解決にもつながると考えられます。今後、培養士の形態評価とAIモデルを組み合わせて移植胚を評価する時代が遠からず来ると感じています。受精胚評価の質の向上と標準化を実現する上で、AIの活用は非常に重要な役割を果たすでしょう。 

iDAスコア 女性年齢 Gardner(AA) Gardner(AB,BA) Gardner(BB) Gardner(他) 全体個数 
9.1-9.9 42歳未満 55.2% 41.9% 37.0% 39.3% 482 
42歳以上 28.1% 7.1% 6.2% 0.0% 272 
1.0-6.6 42歳未満 44.4% 40.0% 22.2% 21.5% 419 
42歳以上 0.0% 12.0% 0.0% 2.6% 458 
表:Gardner分類とiDAScoreを組み合わせた正倍数性胚率との関係 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# AI・統計的手法

# タイムラプス

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 胚盤胞

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

精子DNA断片化はPGT-Aの結果に影響するのか?―胚染色体の正倍数性と男性因子の新たな視点 (Eur J Med Res、2025)

2026.05.02

新鮮胚胚盤胞移植後の周産期・小児期予後(Hum Reprod. 2025)

2026.02.10

絨毛性疾患既往歴が生殖補助医療に及ぼす影響(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.12.02

帝王切開既往女性の生殖補助医療における累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.11.28

軽度慢性子宮内膜炎に対する抗菌薬治療は妊娠転帰を改善しない(Fertil Steril. 2025)

2025.11.12

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.03.14

2020.10.26

夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(Fertil Steril. 2020)

2020.10.26

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27