不育症

2020.09.24

生化学流産(化学流産)は女性年齢とは関係ない?(Gynecological Endocrinology,2020)

はじめに

生化学的流産(化学流産)は、血中または尿中(β-)hCGを検出した後、臨床的妊娠まで発育できない状態とされています。生化学的流産の本当の割合については知られていません。生化学的流産は自然妊娠の13%から23%であることが報告され、凍結融解胚移植と新鮮胚移植でも同様であることが示されています。
ただし、現在まで女性年齢と生化学的流産の割合を示す報告がほとんど存在しませんでした。今回の研究は単一の凍結/新鮮胚移植を実施した比較的大規模な報告ですのでご紹介いたします。

ポイント

女性年齢の上昇は流産率を増加させましたが、生化学的流産率には影響しませんでした(21~30歳:10.7%、31~35歳:9.8%、36~40歳:11.5%、41~42歳:13.6%)。生化学的流産が受精胚側と母体側のどちらの要因かは今後の検討課題です。

引用文献

Michael H. Dahan, et al. Gynecological Endocrinology,2020. DOI: 10.1080/09513590.2020.1807931

論文内容

2008年から2012年にかけて、単一凍結/新鮮胚移植を実施した2177名の女性患者を対象とした後方視的なコホート研究です。データは年齢で層別化され、分散分析とカイ二乗検定を用いて比較検討されています。
生化学的流産の定義は胚盤胞では11日後、初期分割期胚では13日後の4週2日相当の血中β-hCG値が10mIU/mL以上とし、その後の超音波検査で子宮内妊娠、異所性妊娠を認めないものと定義しています。流産率は24週未満に流産した妊娠と定義しています。

結果

流産率は年齢とともに増加しました(p < 0.001)。今回の検討では、女性年齢の上昇は生化学的流産には影響がありませんでした(p=0.72)(21~30歳:10.7%、31~35歳:9.8%、36~40歳:11.5%、41~42歳:13.6%)。

表・グラフはMichael H. Dahanら、Gynecological Endocrinology,2020. より日本語に改変

私見

生化学的流産がどの程度存在するかは、とても興味深いポイントです。今回の論文では年齢上昇によって生化学的流産率が上昇しないと結論づけましたが、もう少し早いタイミング(胚移植後の妊娠判定は3週5日くらいから可能とされています)で生化学的流産を検索するとどうだったのだろう?という興味が残ります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 流産、死産

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# 凍結融解胚移植

# 年齢素因

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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