はじめに
一卵性双胎は、胚発生の初期に起こります。絨毛と羊膜によって分類されます。受精後0日目から4日目までの間に分裂が起こった場合、二絨毛膜二羊膜双胎(DD twin)となります。受精後4日目から8日目までの間に分裂が起こった場合、一絨毛膜二羊膜双胎(MD twin)です。8日目以降に発生した場合、双子は一絨毛膜一羊膜双胎(MM twin)となります。
一卵性双胎は自然妊娠での推定発生率は0.4%です。報告により差はありますが、生殖補助医療技術(ART)では、一卵性双胎が約0.7〜13.2%に増加すると言われています。
今回、一卵性双胎は新鮮胚移植・凍結融解胚移植どちらが多いかというテーマの論文をご紹介させていただきます。
ポイント
一卵性双胎の発生率は凍結融解胚移植よりも新鮮胚移植で高い傾向にあります。凍結融解胚移植では一卵性双胎のリスクが約3割減少し、特に軽度刺激プロトコルでの新鮮胚移植ではリスクが上昇することが示されました。
引用文献
Xitong Liu, et al. J Assist Reprod Genet. 2020. DOI: 10.1007/s10815-020-01985-2.
論文内容
新鮮胚移植と凍結融解胚移植を受けた患者の一卵性双胎率を比較しました。2014年から2018年の間の一箇所の体外受精センター(中国)で行われた単一胚移植後の臨床妊娠(n = 8459:新鮮胚移植3876周期と凍結融解胚移植4583周期)を対象に、一卵性双胎の発生率を後方視的に分析しました。
結果
新鮮胚移植群では120例(3.10%)、凍結融解胚移植群では103例(2.25%)の一卵性双胎が確認され、新鮮胚移植群が高い傾向にありました(p=0.015)。単変量解析では、一卵性双胎のリスクは凍結融解胚移植で減少し(OR 0.72; 95%CI、0.55〜0.94、p=0.016)、新鮮胚移植群の軽度刺激プロトコルで増加しました(OR 1.90; 95%CI、1.04〜3.45、p=0.036)。多変量ロジスティック回帰により、凍結胚移植は一卵性双胎の有意なリスク低下と関連していることが明らかになりました(調整済みOR 0.66; 95%CI、0.46-0.90、p = 0.011)。
私見
彼らはディスカッションで今までの以下のような臨床報告を提示しています。
- 新鮮胚移植の双胎率はFSH投与量が多いほど減少する(Luke Bら. Fertil Steril. 2014)。
- 凍結胚移植が一卵性双胎に及ぼす影響については日本のデータでは変わらないと報告されていて今回のデータとは相反するデータである。凍結融解胚移植は一卵性双胎率に影響を与えない(Kawachiya Sら. Fertil. Steril. 2011)。
- 新鮮胚移植と凍結胚移植で一卵性双胎率は変わらない(Nakasuji Tら. J Assist Reprod Genet. 2014)。
- 新鮮胚移植では今回の結果同様、新鮮胚移植の双胎率はFSH投与量が多いほど減少する(Luke Bら. Fertil Steril. 2014)。
現在まで、一卵性双胎の理由として次のことが考えられています。
- 透明帯の損傷により分割期胚の分裂の可能性を増加
- 卵巣刺激による影響
- ART手技による成長因子やサイトカインや高レベルのフリーラジカルの存在
一絨毛膜二羊膜双胎(MD twin)、一絨毛膜一羊膜双胎(MM twin)は受精後4日目以降の分裂が影響するため、体外培養だけが原因ではなく胚移植後の状況も影響を与えている可能性があります。
現在のところは、一卵性双胎は凍結融解胚移植では自然妊娠よりは増加しますが、新鮮胚移植と比較すると増加しないか、やや低下するというのが今時点でのコンセンサスでしょうか。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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