
はじめに
子宮内膜のagingが着床不全や流産、臨床妊娠率低下に寄与する可能性が注目されています。動物実験ではエストロゲン・プロゲステロン受容体発現の加齢による低下が報告され、ヒトでも卵子提供レシピエントの年齢上昇に伴い妊娠率低下・流産率上昇が観察されています。今回、加齢が子宮内膜受容能検査(ERA)結果に影響するかを検討した後方視的コホート研究をご紹介いたします。
ポイント
女性年齢はnon-receptive ERAのオッズ増加と関連せず、ERAは加齢関連の子宮内膜受容能変化を捉えていない可能性があります。
引用文献
Schwartz KM, et al. J Assist Reprod Genet. 2026 Feb;43:1169-1177. doi: 10.1007/s10815-026-03824-2.
論文内容
ERAが子宮内膜加齢による受容能変化を捉えられるか、また高齢患者の不妊治療に有用かを評価することを目的とした、単一施設(University of California, San Francisco)におけるレトロスペクティブコホート研究です。
2019年1月から2024年5月にERA検査のための子宮内膜生検を受けた210名のうち、検体不十分3名、non-informative 1名、検体劣化1名を除外した205名を解析対象としました。年齢群を<35歳、35–37歳、38–40歳、≥41歳の4群に分け、demographic情報・治療関連variablesを解析しました。生検はPipelleカテーテルを用い、自然周期(NC, n=10, 4.8%)、修正自然周期(mNC, n=25, 12.2%)、ホルモン調整周期(PC, 約83%)で施行されました。PC群はestradiol patch(300mcg/3日)または経口estrace(6mg/日)を最低12日間投与後、筋注プロゲステロン(50mg/日)を開始し、プロゲステロン投与6日目に生検を行いました。Non-receptive ERA(pre-receptiveとpost-receptiveを合わせたもの)の割合をFisher’s exact testで比較し、univariableおよびmultivariable logistic regressionで関連因子を評価しました。
結果
全体で205名中166名(81.0%)がreceptive、33名(16.1%)がpre-receptive、6名(2.9%)がpost-receptiveでした。年齢分布は<35歳(n=35, 17.0%)、35–37歳(n=58, 28.3%)、38–40歳(n=53, 25.8%)、≥41歳(n=59, 28.8%)でした。BMI、未経産率、過去の流産回数、原発性不妊診断、過去の着床不全回数は年齢群間で有意差を認めませんでした。過去の正倍数性受精胚移植失敗回数は群間でわずかに分布が異なるものの統計学的有意差には至りませんでした(p=0.054)。 Non-receptive ERAの割合は<35歳群20.0%、35–37歳群17.2%、38–40歳群17.0%、≥41歳群22.0%であり、年齢群間で有意差を認めませんでした(p=0.52)。ホルモン調整周期施行例のみに限定したsensitivity analysisでも有意差はみられませんでした(p=0.25)。Univariable解析では、<35歳群を基準として35–37歳群OR 1.20(95%CI 0.41–3.51, p=0.74)、38–40歳群OR 1.22(95%CI 0.41–3.66, p=0.72)、≥41歳群OR 0.88(95%CI 0.32–2.48, p=0.82)であり、いずれも有意差は認められませんでした。BMIと過去の正倍数性受精胚移植失敗回数で調整したmultivariable解析でも、≥41歳群のaORは0.98(95%CI 0.34–2.30, p=0.97)であり、年齢とnon-receptive ERAの間に有意な関連は認められませんでした。
ERA後のFET予後(Suppl. Table 1, N=192)は、出生率<35歳51%、35–37歳47%、38–40歳49%、≥41歳42%(p=0.814)で年齢群間に有意差を認めませんでした。non-receptive ERAでERA-guided移植を行った症例(Suppl. Table 2, N=38)でも出生率<35歳57%、≥41歳25%と数値差はあるものの有意差なし(p=0.440)でした。ホルモン調整周期限定(Suppl. Table 3, N=170)ではnon-receptive割合が<35歳8.0%から≥41歳23.6%と年齢上昇に伴い増加傾向を示しましたが、統計学的有意差には至っていません(p=0.25)。
私見
ERAが「子宮内膜加齢」を反映するツールとして有用かを直接検証した点で意義深い報告です。著者らの仮説に反し、≥41歳群でもnon-receptive ERAの割合は若年群と同等であり、ERAは加齢関連の受容能変化を捉えていないと結論されています。
著者らは、ERAでこれらが捉えられない理由として、(1) 238遺伝子のmRNAパネルが微細な加齢変化を検出するには感度不足である可能性、(2) 加齢の影響が転写後段階(タンパク質レベル)で生じている可能性、を挙げています。
加齢のみを根拠にERAを実施することは支持されないという結論は、現時点のエビデンスと合致する妥当な提言と考えます。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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