体外受精

2026.06.09

IVF-FETにおけるvanishing twin・減胎の周産期予後(J Assist Reprod Genet. 2026)

はじめに

vanishing twin・選択的減胎(fetal reduction)いずれも残存児の周産期予後への影響については報告により結論が一致しておらず、特にIVF-FET集団に限定した解析は限られています。今回、33,238例の継続妊娠を対象としたIVF-FETコホート研究をご紹介いたします。

ポイント

IVF-FET後のvanishing twin・選択的減胎はいずれも単胎妊娠と比較して早産・低出生体重児リスクが上昇し、特に妊娠15週以降の発生でリスクがより顕著となりました。

引用文献

Jie Zhang, et al. J Assist Reprod Genet. 2026 Jan 30;43:797-807. doi: 10.1007/s10815-025-03795-w.

論文内容

体外受精-凍結融解胚移植(IVF-FET)後のvanishing twinおよびfetal reduction(選択的減胎)と産科・周産期予後との関連を評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2012年から2022年に中国の単一大学附属生殖センターで選択的減胎を受けた、またはvanishing twinを経験した自己卵子IVF-FET女性が対象とされました。絨毛膜性は妊娠初期超音波で確認し、二絨毛膜双胎および単胎妊娠の継続妊娠が解析対象となりました。vanishing twinおよび選択的減胎コホートは発生・施行時期により早期(妊娠15週未満)と後期(妊娠15週以降)に層別化されました。対照群は単胎妊娠(最初から単一胎嚢)および非減胎二絨毛膜双胎です。主要評価項目は周産期予後と母体合併症で、多変量ロジスティック回帰分析および傾向スコアマッチング(PSM)感度分析が実施されました。交絡因子として母体年齢、BMI、不妊期間、産歴、不妊原因、FETサイクル順位、受精方法、移植胚数、移植胚発育段階、胚質、治療年が調整されました。

結果

33,238例の継続妊娠のうち、単胎妊娠が24,316例、非減胎双胎が7,452例、vanishing twinが1,354例、選択的減胎が116例でした。選択的減胎例116例のうち、54例が妊娠15週未満、62例が妊娠15週以降に施行され、適応は染色体異常31例、構造異常57例、母体合併症5例、産科既往10例、選択的8例、不明5例でした。vanishing twin例1,354例のうち、1,263例が妊娠15週未満、91例が妊娠15週以降に発生しました。
多変量解析では、研究群の出生児予後は非減胎双胎よりも同等または良好でした。単胎妊娠との比較では、早期選択的減胎および後期選択的減胎はいずれも早産リスクの上昇と関連し(早期選択的減胎:aOR 2.70、95%CI 1.26–5.77;後期選択的減胎:aOR 7.23、95%CI 4.12–12.68)、後期選択的減胎は低出生体重リスクも上昇していました(aOR 8.40、95%CI 4.68–15.07)。
早期および後期vanishing twinも初発単胎妊娠と比較して同様に早産および低出生体重リスクが上昇しました(早期vanishing twinの早産:aOR 1.34、95%CI 1.08–1.65;後期vanishing twinの早産:aOR 9.08、95%CI 5.82–14.17;早期vanishing twinの低い出生体重:aOR 1.36、95%CI 1.05–1.75;後期vanishing twinの低出生体重:aOR 8.45、95%CI 5.21–13.72)。SGAおよびLGAについては各群間で有意差は認められませんでした。
産科合併症については、研究群と非減胎双胎との比較では概ね同等または低率でしたが、後期選択的減胎は初発単胎妊娠と比較して妊娠高血圧症候群(HDP)リスクが上昇しており(aOR 5.04、95%CI 2.43–10.46)、後期vanishing twinは単胎妊娠および双胎の両者と比較して胎盤異常リスクが上昇していました(vs単胎:aOR 2.64、95%CI 1.05–6.63;vs双胎:aOR 2.84、95%CI 1.15–7.02)。後期vanishing twinは単胎妊娠と比較して帝王切開率も上昇していました(aOR 2.57、95%CI 1.37–4.82)。なお、早期vanishing twinでは単胎妊娠および双胎と比較して流産率がむしろ低く、出生率が高い結果でした。出生体重z-スコアは後期選択的減胎群で-0.001±1.30と全群中最低値でした。PSM感度分析でもvanishing twin・選択的減胎群における早産・低出生体重リスク上昇は再現されました。

私見

vanishing twinの周産期予後への影響については先行研究で結論が一致していません。

否定派(残存児の予後に影響なし):
La Sala, et al. Fertil Steril, 2006
Romanski, et al. Obstet Gynecol, 2018
Harris, et al. Obstet Gynecol, 2020

肯定派(PTB・LBWリスク上昇):
Pinborg, et al. Hum Reprod, 2005
Pinborg, et al. Hum Reprod, 2007
Evron, et al. Fertil Steril, 2015
Kamath, et al. Hum Reprod, 2018
Zhu, et al. Hum Reprod, 2020

これらの不一致はvanishing twinの定義の差、例えば 胎嚢のみなのか、卵黄嚢を伴う胎嚢なのか、胎児心拍の有無はどうだったのか、片児消失時期はいつなのか、自然妊娠・ART妊娠どちらなのかなどに起因すると考察されています。 
メタアナリシスではこのような感じです。 

文献周産期予後への影響のまとめ
Zhou et al., 2020 J Perinat Med, 2020ART後のvanishing twin妊娠では、もともと単胎として成立したART単胎妊娠と比べて、残存児の早産リスクが高いと報告されています。一方で、双胎妊娠と比べると早産リスクは低く、vanishing twinは「単胎と双胎の中間的リスク」と位置づけられます。低出生体重についても、出生体重低下やSGAリスク上昇の方向が示されています。
Li et al., 2020 J Assist Reprod Genet, 2020ART単胎妊娠におけるvanishing twin syndromeの影響は、消失時期に大きく依存するとされています。14週以前の消失では早産は有意に増加せず、低出生体重は境界的でしたが、14週以降の消失では在胎週数短縮、出生体重低下、早産および低出生体重の増加が明確に示されています。
Sun et al. Arch Gynecol Obstet, 2017VTS全体としては、平均出生体重はやや低下し、極早産リスクは上昇する可能性が示されました。一方、通常の早産率と低出生体重率については有意差がなく、感度分析でも結果は不安定であり、「有害影響はあり得るが結論は慎重に」とされています。

選択的減胎に関しても先行研究は一致していません。 

双胎との比較で予後改善なし:
Hasson, et al. J Matern Fetal Neonatal Med, 2011

双胎との比較で予後改善:
Vieira, et al. AJOG, 2019
Haas, et al. Fertil Steril, 2015

双胎より良好だが流産・早産リスクは上昇:
van de Mheen, et al. Hum Reprod, 2015

双胎より良好だが単胎妊娠より周産期予後不良:
Kristensen, et al. AJOG, 2023

それらも踏まえたディスカッションに書かれていたロジックの説明はためになりました。 
後期選択的減胎でHDPリスクが約5倍に上昇した機序として、壊死した胎児胎盤組織の吸収に伴う炎症性サイトカイン・プロスタグランジンの放出による炎症反応、らせん動脈リモデリング不全、胎盤絨毛発達不良が考察されています。 
後期vanishing twinでの胎盤異常頻度上昇についても、第2三半期の胎児消失は染色体異常よりも着床部位異常・胎盤crowding・胎盤機能不全に起因することが多く、前置胎盤などの胎盤付着異常リスクを高めると説明されています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# 周産期合併症

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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