体外受精

2026.06.16

子宮内膜胚受容能検査と個別化下個別化胚移植の有効性(J Assist Reprod Genet. 2026)

はじめに

着床はembryoとendometriumのクロストークが必要であり、破綻すれば着床は継続しません。この概念に基づき、着床のwindow(WOI)を同定する目的で、ERA(Igenomix)、ER Map/ERPeak(IGLS/CooperSurgical)、WIN-Test(INSERM)、rsERT(Yikon Genomics)、ERT(Yikon Genomics)など、複数の transcriptomic endometrial receptivity tests(TERTs)が開発されてきました。PGT-Aの普及により胚性因子を最小化した着床評価ができる機会が増え、着床不全における内膜因子への注目が高まっていますが、TERTsの臨床的有用性については議論が続いています。TERTsガイド下のpersonalized embryo transfer(pET)の有効性と安全性をstandard embryo transfer(sET)と比較した最新のシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。

ポイント

非RIF集団では子宮内膜胚受容能検査の有用性は乏しく、RIF集団でも未検査胚移植で出生率の改善傾向はあるものの、正倍数性胚移植では有用性は不確実です。

引用文献

Demian Glujovsky, et al. J Assist Reprod Genet. 2026 Jan 30;43(7):1049-1062. doi: 10.1007/s10815-026-03816-2.

論文内容

生殖補助医療においてTERTsガイド下のpersonalized embryo transfer(pET)とstandard embryo transfer(通常ET)を比較した有効性および安全性を評価することを目的としたシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。
PubMed/MEDLINE、EMBASE、CENTRAL、LILACS、CINAHLを2025年11月まで言語制限なしで検索しました。RCTおよびコホート研究のうち、低~中等度のリスク・オブ・バイアスのものを対象としました。学会抄録および参考文献リストもスクリーニングされました。2名のレビュアーが独立してスクリーニング、データ抽出、リスク・オブ・バイアスの評価を行いました。RCTとコホート研究はランダム効果モデルを用いて別々にプールされ、ORはgeneric inverse-variance methodで統合されました。事前規定したサブグループには、過去の移植不成功歴と正倍数性胚移植が含まれました。

結果

44研究(RCT 4件、コホート研究40件)が組み入れられました。34研究はERAを、6研究はrsERTを、4研究はその他のプラットフォームを評価していました。過去の移植不成功歴が限定的または無い女性(非RIF)では、低リスクの2 RCTにおいてERAガイド下pETは通常ETと比較して出生率にほとんど差を認めませんでした(RR 0.98、95% CI 0.88–1.10、I²=39%、1069名、moderate certainty)。臨床的妊娠率も同様(RR 0.99、95% CI 0.91–1.08、I²=72%、moderate certainty)でした。反復着床不全(RIF)女性で未検査胚を移植した場合、低・中リスクの9コホート研究でTERTガイド下pETは通常ETと比較して出生率の上昇が示されました(OR 1.58、95% CI 1.34–1.86、4754名、moderate certainty)。同方向の効果はERA(OR 1.44、95% CI 1.20–1.73)、rsERT(OR 2.01、95% CI 1.45–2.78)、ERT(OR 2.67、95% CI 1.09–6.52)で認められました。一方、RIF女性で正倍数性胚移植を行った5研究では、有用性についてのエビデンスは非常に不確実でした(OR 1.36、95% CI 0.83–2.22、852名、very low certainty)。所見は異質性が高く不正確であり、エビデンスのcertaintyは非常に低いものでした。本レビューより、現行のエビデンスは非RIF症例におけるTERTsのルーチン使用を支持しないこと、RIF症例では未検査胚移植時にTERTガイド下pETがおそらく出生率上昇と関連するものの、正倍数性胚移植ではbenefitが不確実であり、生物学的効果が小さい、方法論的バイアス、もしくはプロトコール実装の不一致を反映している可能性があることが結論づけられました。

私見

2023年に同著者らが発表した先行レビュー(Glujovsky D, et al. Hum Reprod. 2023)と同じ結果です。
正倍数性胚移植群ではOR 1.36(95% CI 0.83–2.22)と統計学的有意差は消失しますが、著者らは検出力不足だけでなく、本来embryo competenceがコントロールされた条件下でこそ真の内膜タイミング効果が明瞭になるはずである点を重視しています。ここでbenefitが現れないこと自体が「真の生物学的効果は小さい」ことの傍証であり、未検査胚移植で見られたbenefitはaneuploidyによる胚側ばらつきと残存交絡による見かけ上の効果である可能性が高いと議論されています。実際、Ruiz-Alonso M,らの成績がよすぎるだけで、他は有用性が低いとされています。

肯定的な先行報告: 

  • Ruiz-Alonso M, et al. Sci Rep. 2025
    後方視コホート、過去の移植不成功歴を有する女性を対象とした正倍数性胚移植でERAガイド下pETを評価。aOR 2.83、95% CI 1.49–5.57
  • Cozzolino M, et al. J Assist Reprod Genet. 2020
    後方視コホート、RIF症例を対象にERAおよびPGT-Aの有用性を評価
  • Simón C, et al. Reprod Biomed Online. 2020
    多施設RCT、37歳以下・BMI<30・3回以下の良好胚移植不成功歴の女性を対象、未検査胚移植でERAを評価。per-protocol解析で優位性、ITTでは差なし

否定的・中立的な先行報告: 

  • N, et al. JAMA. 2022 
    多施設RCT、30–40歳・BMI<40・2回以下の移植歴の女性を対象、正倍数性胚移植でERAを評価し出生率に差なし
  • Mei Y, et al. Front Endocrinol. 2023
    システマティックレビュー、正倍数性胚移植サイクルに限定してERAの効果を評価し、一般集団・RIF集団いずれもbenefitなし
  • Pirtea P, et al. Fertil Steril. 2021
    後方視コホート、連続する3回の正倍数性凍結単一胚移植成績を評価し、真の反復着床不全は稀であることを報告
  • Ben Rafael Z. Hum Reprod Open. 2021
    ナラティブレビュー/論評、ERAを未検証技術として方法論的に批判

2023年のESHRE Good Practice Recommendations on RIFでもTERTsのルーチン使用を支持しておらず、ASRMもその臨床使用を推奨していません。本レビューの知見は、TERTsを使用する場合は、十分に特徴づけられたRIF症例(≥2–3回の良好胚移植不成功)に限定し、shared decision-makingの中で慎重に検討すべきであることを支持するものです。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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