はじめに
40~49歳の女性における子宮筋腫の有病率は、8カ国の21,000名以上の女性を対象とした国際的なインターネットベースの横断調査では、英国 4.5% フランス 4.6% カナダ 5.5% 米国 6.9% ブラジル 7.0% ドイツ 8.0% 韓国 9.0% イタリア 9.8%と報告されています。
Anne Zimmermann, et al. BMC Womens Health. 2012 Mar 26:12:6. doi: 10.1186/1472-6874-12-6.
国や検査の仕方によってばらつきが生じるとされています。今回オーストラリア女性の子宮筋腫の有病率をご紹介いたします。
ポイント
子宮卵管造影検査(HSG)中の油性ヨード含有造影剤への妊娠前曝露は、水溶性造影剤への曝露と比較して、小児神経発達に影響を及ぼさなさそうです。
引用文献
Sarai M Keestra, et al. Hum Reprod. 2024 Oct 1;39(10):2287-2296. doi: 10.1093/humrep/deae183.
論文内容
子宮卵管造影検査(HSG)中の油性ヨード含有造影剤への妊娠前曝露は、水溶性造影剤への曝露と比較したH2Oil試験の長期追跡調査(オランダ;2012~2014;NTR3270)にて小児神経発達に影響を及ぼすかどうか比較検討しました。本試験でHSG後6ヵ月未満に出生した369名の小児のうち、追跡調査のために連絡を取ることに同意した140名の小児の母親と連絡を取りました。追跡調査は2022年1月から7月まで行われました本研究では、油性造影剤(42名)または水溶性造影剤(27名)によるHSG後妊娠した6~9歳の小児69名を対象としました。評価対象は、知能(Wechsler Intelligence Scale for Children)、神経認知的転帰(コンピューターによる神経認知検査)、行動機能(親および教師によるアンケート)、学業成績としました。
結果
油性造影剤を用いたHSGを受けた母親から生まれた学齢期の小児は、水溶性造影剤を用いたHSGを受けた母親から生まれた小児と、知能、神経認知機能、行動機能、学業成績に関して差はありませんでした。
私見
この研究はディスカッションでも一貫してヨードを用いたHSGに否定的です。油性造影剤の対象はヨード含有が低い水溶性造影剤ではなくヨード曝露のない対照群にすべきとしていますし、今回の少ない症例数では安全だという証明にはならないとしています。
甲状腺に対するWolff-Chaikoff効果が一過性のものであることを考慮して、HSG後一定期間夫婦生活禁止することや正常に戻るまで6ヶ月間モニターすることも書かれていますが、HSG後の妊娠率が増加するという観点からは中々妊娠しやすい時期に夫婦生活を避けるように指導することは非現実的である気がします。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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