一般不妊

2024.09.30

卵巣予備能低下の頻度(J Clin Med. 2023)

はじめに

卵巣予備能低下の女性の割合ってどの程度いるのでしょう。同じアジアのビッグデータで韓国からの報告があります。ご紹介いたします。

ポイント

卵巣予備能低下の頻度は20-24歳 3.8%、25-29歳 6.0%、30-34歳 11.0%、35-39歳 28.6%、40-44歳 69.3%、45-49歳 95.0%でした。 

引用文献

Rihwa Choi, et al. J Clin Med. 2023 Aug 3;12(15):5099.  doi: 10.3390/jcm12155099. 

論文紹介

韓国の生殖年齢女性の大規模集団における卵巣予備能低下の有病率を、血清AMHおよびFSH値の異なるカットオフ値を用いて年齢別および地域別に評価しました。2022年にAMHとFSHの両方の検査(Elecsys)を受けた13,351名を対象としました。卵巣予備能低下率は年齢とともに増加しました。卵巣予備能低下の全体的な有病率の最大有病率は、20-24歳、25-29歳、30-34歳、35-39歳、40-44歳、45-49歳の女性において、それぞれ3.8%、6.0%、11.0%、28.6%、69.3%、95.0%でした。AMHが低下せずに血清FSHのみが上昇した女性は、全女性の1.1%-2.5%でした。 

私見

この論文面白くて取り上げました。体外受精前提であればAFCやAMHでの議論が多いのですが、プレコンセプションケアなどを前提にすると採血メインのほうがいいですよね。FSH単独の卵巣予備能低下はほとんどいないことがわかります。 

ACOG/ASRMの卵巣予備能低下の基準は、AMH<1ng/mLおよびFSH>10mIU/mLとしています。 
committee opinion. Fertil. Steril. 2020;114:1151–1157. doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.09.134. 

韓国の卵巣予備能低下の基準は、AMH≦1.0ng/mLおよびFSH≧12.0mIU/mL としています。 
Ministry of Health and Welfare Korea. Mother and Child Health Service by Mother and Child Health Act.

韓国基準(AMH≦1.0ng/m FSH≧12.0mIU/mL cutoff)

全体  20-24歳 25-29歳30-34歳  35-39歳  
人数  13351  1280  2049  2874  2269  
正常  61.5%  96.2%  94.0%  89.0%  71.4%  
AMH のみ  18.6%  1.9%  2.7%  5.6%  14.9%  
FSH のみ  2.5%  1.6%  2.3%  3.0%  4.3%  
AMH FSH両方  17.4%  0.4%  0.9%  2.5%  9.4%  
AMH FSH片方  38.5%  3.8%  6.0%  11.0%  28.6%  

ACOG/ASRM 基準(AMH<1ng/mL FSH>10mIU/mL cutoff)  

全体  20-24歳  25-29歳  30-34歳35-39歳  
人数  133511280  2049  2874  2269  
正常  62.8%  97.2%  95.5%  90.6%  73.4%  
AMH のみ  21.0%  1.9%  3.0%  6.2%  17.8%  
FSH のみ  1.1%  0.5%  0.7%  1.3%  2.0%  
AMH FSH両方  15.2%  0.4%  0.8%  1.9%  6.9%  
AMH FSH片方  37.2%  2.8%  4.5%  9.4%  26.6%  

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 抗ミューラー管ホルモン(AMH)

# 卵巣予備能

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

不妊治療前の甲状腺検査意義は?(Hum Reprod. 2025)

2025.08.12

慢性子宮内膜炎の子宮鏡診断基準:メタアナリシス(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.06.24

不妊女性における慢性子宮内膜炎と子宮内細菌叢の関連(Fertil Steril. 2019)

2025.05.28

不妊女性における慢性子宮内膜炎の分子微生物学的診断法(Am J Obstet Gynecol. 2018)

2025.04.22

妊娠中hCG値と関連項目について(Eur J Epidemiol. 2015)

2025.02.13

一般不妊の人気記事

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

クロミフェン使用による多胎妊娠と周産期合併症のリスク(Fertil Steril. 2025)

妊娠と甲状腺疾患(ACOG Practice Bulletin 2020)

不妊患者の自覚症状のない甲状腺機能低下(ASRMガイドライン2024)

子宮内膜ポリープ切除は電気切除?組織回収システム?(Int J Gynaecol Obstet. 2023)

今月の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2025.09.02

挙児希望男性の初回精液検査・精子DNA断片化率・精液酸化還元電位の異常頻度(日本受精着床学会雑誌. 2024)

2025.09.02

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

男性不妊と女性不妊におけるART妊娠の周産期予後の違い(Fertil Steril. 2025)

2025.09.08

PGT-Aによる体外受精での出産までの期間への影響(Fertil Steril. 2025)

2025.09.09

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

2024.10.15