体外受精

2025.01.30

帝王切開既往が単一凍結融解胚移植予後に与える影響(J Assist Reprod Genet. 2024)

はじめに

帝王切開率は世界的に過去30年間で着実に増加しています。世界的にも帝王切開子宮瘢痕症の診断基準が定められてきており、帝王切開後不妊は今後のHot topicの一つです。今回は前回体外受精妊娠・出産→同一施設で分娩→再度同一施設で胚移植をおこなった場合の帝王切開歴が単一凍結融解胚移植の妊娠予後に与える影響を調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

帝王切開歴は、その後の単一凍結融解胚移植における生化学的妊娠率、臨床妊娠率、生産率を有意に低下させます。

引用文献

Cao K, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. Doi: 10.1007/s10815-024-03368-3

論文内容

帝王切開歴が単一凍結融解胚盤胞移植における妊娠・新生児予後に与える影響を、経腟分娩歴と比較して検討することを目的としました。

2011年1月から2021年1月までの期間に、単一生殖医療センターで前回出生と同一採卵周期由来の単一凍結融解胚盤胞を移植希望した5,817名を対象とした後方視的コホート研究です。単回帝王切開歴のある患者を帝王切開群、単回経腟分娩歴のある患者を経腟分娩群に分類しました。全患者に単一胚盤胞移植を実施し、交絡因子の影響を最小限にするため、修正ポアソン回帰分析と傾向スコアマッチング分析を実施しました。

結果

帝王切開歴女性は、経腟分娩歴女性と比較して、生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、出生率が有意に低く、帝王切開率は有意に高値でした。一方、多胎妊娠率、流産率、異所性妊娠率、多胎分娩率、母体合併症、早産および新生児予後には有意差を認めませんでした。

私見

生化学的妊娠率、臨床的妊娠率、出生率の低さは生化学的妊娠の差がそのまま臨床的妊娠率、出生率に影響を与えてそうな印象です。つまり、対峙・接着不全を引き起こしているのではないかと推測されます。帝王切開率の増加は、帝王切開後の子宮破裂予防の観点から一般的な見解と思われますが、そこに帝王切開子宮瘢痕症の所見・症状が加わることで、より深い知見が得られる可能性があります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# 帝王切開

# 帝王切開瘢痕症候群

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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