一般不妊

2025.02.17

子宮鏡による帝王切開瘢痕部評価法の標準化の試み

はじめに

帝王切開分娩の増加に伴い、その長期合併症への関心が高まっています。帝王切開後の子宮瘢痕部にできるくぼみ(niche: ニッシェ)は、月経異常や疼痛、不妊などの原因となることがあります。超音波検査によるニッシェの評価方法については既に国際的なコンセンサス(帝王切開子宮瘢痕症の定義:JAMA Netw Open. 2023)が得られていますが、子宮鏡検査による評価方法については標準化されていませんでした。こちらを行なっていくべき試み・シートをご紹介いたします。

ポイント

子宮鏡検査による帝王切開子宮瘢痕部評価方法が標準化すべき評価フォームが開発されました。この評価方法は超音波所見もあわせて評価するべき部分、評価基準があいまいな部分があるのが課題です。

引用文献

Min N, et al. Facts Views Vis Obgyn. 2024. Doi: 10.52054/FVVO.16.3.036

論文内容

子宮鏡検査による帝王切開子宮瘢痕部評価の専門家13名を対象に、修正デルファイ法を用いてコンセンサスを形成しました。子宮鏡検査は必ず超音波検査と組み合わせて行い、残存子宮筋層の厚さを評価することが重要とされました。

「子宮帝王切開瘢痕部の子宮鏡評価フォーム」

※何個のnicheが存在?(複数あれば個別に評価) 
※分類:単純型/1分枝付き単純型/複雑型 
※大きさ:小/中/大/極大 
※内子宮口と一視野で見えるか(下縁1-2cm以下) 
※位置:子宮頸部/子宮腔内 
※外子宮口からの距離 ….. mm 

【niche内所見】

・嚢胞形成、陰窩、側枝、ポリープ様構造、線維化組織 
・動的弁、血液、粘液、胎盤遺残、内膜の有無 
・出血(圧を下げた時):あり/なし 
・血管数:5未満/5以上 
・子宮鏡の直径 ….. mm

私見

この評価法により、帝王切開子宮瘢痕症の臨床診療での治療戦略が向上するだけでなく、研究間での異質性が減り論文間の比較もしやすくなります。曖昧な部分も多々ありますのでデータを収集していきたいと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮鏡

# 帝王切開

# 帝王切開瘢痕症候群

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

妊娠中の喘息:正しい知識と治療継続の重要性(Allergy. 2025)

2025.12.26

PCOS患者におけるレトロゾール延長投与の妊娠転帰への影響(F S Rep. 2025)

2025.11.11

早発卵巣不全(POI)の診断と管理:新しいエビデンス(Human Reproduction Open. 2024)

2025.10.27

PCOS診断におけるAMH測定の有用性:HARMONIA研究(Fertil Steril. 2025)

2025.10.20

子宮内膜症患者における卵巣反応不良とART成績(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.10.17

一般不妊の人気記事

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

妊活中の子宮内膜症進行リスク(Hum Reprod. 2025)

不妊分野での柴苓湯使用について

PCOS患者におけるレトロゾール延長投与の妊娠転帰への影響(F S Rep. 2025)

難治性排卵障害PCOSにはレトロゾール長期間内服が奏功( Fertil Steril. 2023)

PCOS診断基準(2024)の内分泌異常基準値(J Obstet Gynaecol Res. 2023)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

妊娠女性における葉酸サプリメント摂取状況と情報源(Public Health Nutr. 2017)

2025.12.09

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

凍結胚移植当日の血清E2値と流産率(Hum Reprod. 2025)

2025.06.09

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10