はじめに
帝王切開分娩の増加に伴い、その長期合併症への関心が高まっています。帝王切開後の子宮瘢痕部にできるくぼみ(niche: ニッシェ)は、月経異常や疼痛、不妊などの原因となることがあります。超音波検査によるニッシェの評価方法については既に国際的なコンセンサス(帝王切開子宮瘢痕症の定義:JAMA Netw Open. 2023)が得られていますが、子宮鏡検査による評価方法については標準化されていませんでした。こちらを行なっていくべき試み・シートをご紹介いたします。
ポイント
子宮鏡検査による帝王切開子宮瘢痕部評価方法が標準化すべき評価フォームが開発されました。この評価方法は超音波所見もあわせて評価するべき部分、評価基準があいまいな部分があるのが課題です。
引用文献
Min N, et al. Facts Views Vis Obgyn. 2024. Doi: 10.52054/FVVO.16.3.036
論文内容
子宮鏡検査による帝王切開子宮瘢痕部評価の専門家13名を対象に、修正デルファイ法を用いてコンセンサスを形成しました。子宮鏡検査は必ず超音波検査と組み合わせて行い、残存子宮筋層の厚さを評価することが重要とされました。
「子宮帝王切開瘢痕部の子宮鏡評価フォーム」
※何個のnicheが存在?(複数あれば個別に評価)
※分類:単純型/1分枝付き単純型/複雑型
※大きさ:小/中/大/極大
※内子宮口と一視野で見えるか(下縁1-2cm以下)
※位置:子宮頸部/子宮腔内
※外子宮口からの距離 ….. mm
【niche内所見】
・嚢胞形成、陰窩、側枝、ポリープ様構造、線維化組織
・動的弁、血液、粘液、胎盤遺残、内膜の有無
・出血(圧を下げた時):あり/なし
・血管数:5未満/5以上
・子宮鏡の直径 ….. mm
私見
この評価法により、帝王切開子宮瘢痕症の臨床診療での治療戦略が向上するだけでなく、研究間での異質性が減り論文間の比較もしやすくなります。曖昧な部分も多々ありますのでデータを収集していきたいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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