はじめに
早産は周産期死亡および新生児の長期的な神経学的罹患率の主要な原因であり、細菌性腟症を持つ妊婦では早産のリスクが高まります。細菌性腟症の診断にはAmselの基準や顕微鏡ベースのNugentスコアが長年使用されてきましたが、細菌の形態学的評価は時間がかかり、やや主観的で、病原体を正確に特定できないという課題がありました。妊娠中細菌性腟症診断のためのリアルタイムPCR検査をご紹介いたします。
ポイント
Flora Select™は腟内細菌叢におけるLactobacillus種の相対的優勢率を判定し、細菌性腟症関連細菌4種とUreaplasma、Mycoplasma種を同時に検出できる検査法です。
引用文献
Hideto Yamada, et al. Microorganisms. 2024 Oct 21;12(10):2110. doi: 10.3390/microorganisms12102110.
論文内容
妊娠初期における腟内細菌叢の評価のために新しく開発されたリアルタイムPCR検査であるFlora select™(FS)の性能を評価することを目的とした前向きコホート研究です。
556名妊婦を対象に、妊娠8週-12週にFlora select、細菌性腟炎診断のためのグラム染色スコアリングシステムであるNugentスコア、および従来の細菌培養の検査を実施しました。Nugentスコアが0-3、4-6、および≧7であった女性はそれぞれ469名(84.2%)、41名(7.4%)、47名(8.5%)でした。
Lactobacillus種の相対的優勢率が高い(≧80%)、中程度(50%≦、<80%)、低い(0.1%≦、<50%)、検出なし(<0.1%)はそれぞれ63.0%、8.8%、17.1%、11.2%でした。Gardnerella、Prevotella、Atopobium、Streptococcus、Ureaplasma、およびMycoplasma種はそれぞれ23.9%、17.6%、17.1%、7.0%、23.0%、4.9%の女性で検出されました。
結果
Nugentスコア≧7のすべての女性でGardnerellaは検出され、40.4%でUreaplasmaが検出されました。Nugentスコア4-6の女性の70.7%で細菌性腟炎関連細菌が検出されました。
Gardnerella、Prevotella、Atopobium、Streptococcus、Ureaplasma、およびMycoplasma種はNugentスコア≧4またはLactobacillus種<50%の女性で高い有病率を示しました。
Flora selectは従来の細菌培養よりもGardnerella、Prevotella、およびAtopobium種をより効果的に検出しました。
私見
Flora select™は、Varinos Inc.(東京)が提供しており、Lactobacillus種の相対的優勢率、細菌性腟症関連細菌4種、UreaplasmaおよびMycoplasma種の同時検出を行います。
検査方法は特異的プライマーによるリアルタイムPCRであり、次世代シーケンシングとの相関係数は0.995と高い精度が示されています。
従来の方法に比べ、精度とスピードの両面で有用と考えられます。
文責:川井清考(院長)
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