はじめに
アシストハッチングはランダム化比較試験でもメタアナリシスでも出生率に関して有効性は証明されていません。では、難治性の反復着床不全患者に限った場合、効果があるのではないか?と調査した報告をご紹介いたします。
ポイント
アシストハッチングは反復着床不全患者の累積出生率を増加させるエビデンスをランダム化比較試験では示すことができませんでした。
引用文献
Max H J M Curfs, et al. Hum Reprod. 2023 Oct 3;38(10):1952-1960. doi: 10.1093/humrep/dead173.
論文内容
二重盲検多施設ランダム化比較試験としてデザインされました。アシストハッチング後の出生率が10%増加することを証明するために各治療群に294名をリクルートすることをパワーアナリシスで確認し、2012年11月から2017年11月に588名の不妊症女性をオランダの5つの病院でリクルートしました。297名をアシストハッチング群に、295名をコントロール群に割り付けました。 参加者は、少なくとも2回の連続した受精胚移植を行い妊娠に至らなかった患者を対象としました。
結果
新鮮胚移植と凍結融解受精胚移植を含む、開始周期あたりの累積出生率は、アシストハッチング群で25.9%(77/297)、コントロール群で23.1%(68/295)で差を認めませんでした(RR:1.125、95%CI:0.847~1.494、P= 0.416)。
私見
アシストハッチングは2件のメタアナリシスでも有効性を示されていません。慣習的に行われていることをやめていく勇気も必要なのかもしれません。
Lacey L, et al. Cochrane Database Syst Rev 2021;3:1–120.
Martins WP, et al. Hum Reprod Update 2011;17:438–453.
文責:川井清考(WFC group CEO)
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