体外受精

2024.10.10

コエンザイムQ10における生殖機能への影響

はじめに

コエンザイムQ10は、抗酸化作用とATP産生増加の両面からミトコンドリア機能を改善し卵巣機能改善を期待されます。ヒトでの結果を示した報告をご紹介します。

ポイント

コエンザイムQ10の卵子の質に対しての無作為化比較試験では、ともに改善なしという結果に終わっていますが、favorableを予見させる報告となっています。

引用文献

Yangying Xu,et al. Reprod Biol Endocrinol. 2018 Mar 27;16(1):29. doi: 10.1186/s12958-018-0343-0.

論文内容

卵巣反応不良患者に対する無作為化試験

POSEIDONグループ3に該当する卵巣反応不良患者186名を対象とした前向き無作為化比較試験である。参加者は、体外受精周期の60日前からCoQ10 600mg/dayによる事前治療を行う群と事前治療を行わない群に無作為に割り付けられた。高品質の胚の数が主要評価項目でした。

結果

169名の参加者が評価されました(CoQ10群76名、対照群93名)。CoQ10に対するコンプライアンスが低かったため、17名の女性が除外されました。患者背景および臨床的特性は同等でした。CoQ10群は、ゴナドトロピン量が有意に少なく、血清エストラジオールピーク値が高くなりました。CoQ10群は回収卵子数(4個、四分位範囲2~5)が多く、受精率(67.49%)および高品質胚(1個、四分位範囲0~2)の数も多くなりました(p < 0.05)。CoQ10群では、胚の発育不良を理由に胚移植をキャンセルした女性が対照群よりも少なく(8.33% vs. 22.89%、p = 0.04)、有効胚を凍結できる患者が多くいました(18.42% vs. 4.3%、p = 0.012)。胚移植1回あたりおよび採卵1回あたりの臨床的妊娠率および生児出生率は、CoQ10群投与群で高い傾向にあったが、統計的有意性は認められませんでした。

引用文献

Yaakov Bentov, et al. Clin Med Insights Reprod Health. 2014 Jun 8:8:31-6. doi: 10.4137/CMRH.S14681.

論文内容

途中中断された無作為化試験

35歳から43歳の体外受精患者を対象に、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施しました。患者はCoQ10 600mg/dayまたはプラセボカプセルを投与しました。極体検体に対してCGHを用いて異数性率を比較しました。検出力計算によると、各群に27名の患者が必要でした。

結果

極体生検が胚の質や着床に及ぼす影響に関する安全性への懸念により、目標の被験者数に達する前に本試験は中止されました。39名の患者が評価され、無作為に割り付けられ、最終的には27名が投与されました(CoQ10投与群12名、プラセボ群15名)。24名が極体生検と胚移植を含む体外受精-顕微授精サイクルを完了した(CoQ10投与群10名、プラセボ群14名)。患者背景および臨床的特性は同等でした。異数性率は、CoQ10投与群では46.5%、プラセボ群では62.8%でした。臨床的妊娠率は、CoQ10群で33%、対照群で26.7%でした。

私見

コエンザイムQ10は生体内で合成される脂溶性化合物であり、ヒトの卵胞液にも存在することが知られています。ミトコンドリア電子伝達系の必須構成成分であるCoQ10は、ATP合成の効率を高める補酵素として機能したり、ATP産生過程で発生する活性酸素に対して抗酸化作用を機能します。
CoQ10は加齢に伴い臓器中の含有量が減少することがわかっていますから、上記の無作為化試験をみても、決してネガティブに作用する印象はもちませんでした。
良好胚ができないヒトが摂取希望をされた場合は、現段階でのエビデンスを提供してあげることが好ましいと思います。
Kazuhiro Kawamura, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2023 Aug;49(8):2015-2022. doi: 10.1111/jog.15683. から論文は引用しました。非常に簡潔にまとまっていて勉強になりました。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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