一般不妊

2020.08.19

着床する時期のタイミングは妊娠率に影響するの?その2( Hum Reprod. 2020)

はじめに

「着床する時期のタイミングは妊娠率に影響するの?」(着床する時期のタイミングは妊娠率に影響するの?(Fertil Steril. 2014))という論文を紹介しましたが、来院される患者様から様々な質問を受けました。着床する時期のタイミングが妊娠率を「低下させる」というのが前回紹介した論文の内容でしたが、「低下させないのではないか?」という論文が報告されましたのでご紹介したいと思います。

ポイント

着床時期のタイミングが妊娠率に影響を与えないという前向き研究の報告。低下するという報告もあるが、影響は微々たるものと考えられます。

引用文献

Joseph B Stanford, et al. Hum Reprod. 2020 DOI: 10.1093/humrep/deaa156

論文内容

1992年から1996年に収集されたデータで、ヨーロッパ5カ国で実施された前向き研究であるFERTILI研究のデータを使用し、着床時期のタイミングが妊娠率に影響を与えるかどうかを検証しました。参加した18-40歳の女性(661人:2606周期、妊娠は418人)は、子宮頸管粘液の観察、基礎体温の測定、性交渉のタイミング、妊娠について、メモをつけていただきました。

排卵は、月経初日の13日前と決めて「タイミング妊娠可能時期」を排卵日の5日前から3日後まで、「受精胚の着床時期」を、排卵後5日から排卵後9日(月経周期の終了日の3~9日前に相当)としました。タイミング回数は「なし」「1回」「2回」「3回以上」に分類しました。夫婦年齢、過去の妊娠歴、性交回数を調整しながら、着床前後の性交が妊娠可能性に及ぼす影響を解析しました。

結果ですが、着床前後のタイミングが妊娠に及ぼす影響はありませんでした:着床前後の性交を3回以上行った場合と行わなかった場合の調整後FR:1.00、95%信頼区間:0.76-1.13でした。

私見

着床時期のタイミングが妊娠率を下げるか下げないかの議論、面白いですね。この2つの結果が異なる論文は共に前向き研究であり、基礎体温を用いた研究です。排卵日は月経初日の13日目と定義して解析を行っています。(下げるという論文の方が一部は尿中排卵検査キットも使っていますが) 

今回の論文(妊娠率を下げない)は2020年に報告されましたが、参加者データは1992-1996年です。前回紹介した論文(妊娠率を下げる)は2014年に報告されていますが、参加者データは2008-2012年です。社会背景を考えると新しい母集団の方が現代に即しているのかなと考えてしまいます。 

私が今、患者様に提供できる情報は2つかと思っています。参考になさってください。 

  • 「着床時期のタイミングは妊娠率を下げる、下げない」の結論は出ていませんが、妊娠率を上げるわけではなさそうなので無理にタイミングをもつ必要はないでしょう。
  • 着床時期のタイミングが妊娠に影響するかどうかの論文は、月経周期をもとにした論文ですので、このあと基礎体温管理アプリなどのビッグデータが出るのを待ちましょう。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 基礎体温

# タイミング指導

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

クロミフェン使用による多胎妊娠と周産期合併症のリスク(Fertil Steril. 2025)

2025.09.05

AI 5日 vs. 7日投与の卵巣刺激結果(Hum Reprod Open. 2024)

2024.12.05

PCOS女性に対するレトロゾール投与法(F S Rep. 2024)

2024.06.19

子宮内膜蠕動運動の妊娠への関連(Fertil Steril. 2017)

2024.06.14

採卵時回収卵なかった場合の追加人工授精は無益(Reprod Biomed Online 2014)

2023.07.10

一般不妊の人気記事

子宮卵管造影後どういうカップルが妊娠しやすい?(論文紹介)

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

不妊患者の自覚症状のない甲状腺機能低下(ASRMガイドライン2024)

2020.06.05

HCGトリガーと人工授精のタイミング:同時実施 vs 36時間後実施の比較検討(Reprod Biomed Online. 2019)

難治性排卵障害PCOSにはレトロゾール長期間内服が奏功( Fertil Steril. 2023)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.01

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

2025.03.25

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30