卵子の回りは、通常、ゼリー状の殻で全体を覆われています。このゼリー状の殻は半透明で中の卵子が透けて見えるため、専門用語で透明帯と呼ばれています。
通常、透明帯のどこにも穴はなく完全に塞がっている状態で、亀裂も入っていません。しかし、透明帯に亀裂が入っている卵子があります。このような卵子は培養液間を移動している間に透明帯の亀裂から中の卵子が亀裂から外に出てしまい、稀に透明帯のない卵子となることがあります。透明帯がなくても顕微授精は可能で、妊娠することは既に2001年に報告されています。ここでは透明帯のない卵子の顕微授精の動画を紹介します。
Pregnancy following fertilization of zona-free, coronal cell intact human ova: Case Report.
Stanger JD, Stevenson K, Lakmaker A, Woolcott R.
Hum Reprod. 2001 Jan;16(1):164-167.
その前に、先ずは透明帯のある卵子の顕微授精をご覧ください。卵子の左側から動かないように固定して、予め、透明帯に穴を開けて(透明帯にトンネルを作る)、その穴に精子注入用のガラス針を貫通させます。次いで、卵子本体にガラス針先端を押し込んでめり込ませてから、振動により卵子に穴を開けて精子を卵子の中に注入します。
次に透明帯のない卵子の顕微授精をご覧ください。卵子の左側から動かないように固定します。透明帯がないので、いきなり卵子本体にガラス針先端を押し込んでめり込ませてから、振動により卵子に穴を開けて精子を卵子の中に注入します。
一見、透明帯のない卵子の方が簡単に見えますが、殻に覆われておらず卵子本体がむき出しになっている状態です。むき出しになった卵子は脆く壊れやすいので、始めに卵子の左側から動かないように固定する操作が困難です。強く固定し過ぎると卵子を破裂させてしまう可能性があるので繊細な操作が求められます。
最初に報告したように、透明帯がない卵子でも顕微授精により受精して、妊娠することを知って頂けたら幸いです。
文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士)
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