不育症

2026.07.24

反復流産におけるMycoplasma・Ureaplasma感染と治療による妊娠予後(Fertil Steril. 2025)

はじめに

不育症の約半数は主たる不育症検査をおこなっても原因不明のままです。そのなかの一部として感染性素因への関心が高まっており、特に慢性子宮内膜炎(CE)は不育症患者で7〜56%と高い有病率が報告されています。Mycoplasma hominisおよびUreaplasma urealyticumは生殖器の上下部に感染する性器マイコプラズマで、しばしば不顕性感染として存在し、通常の不妊・流産精査では検査されません。今回、反復流産患者におけるこれらの病原体の有病率と治療後の妊娠予後を評価した大規模前向きコホート研究をご紹介いたします。

ポイント

原因不明不育症患者ではMycoplasma・Ureaplasma感染の有病率が高く、ドキシサイクリン治療による除菌成功例で出生率が有意に改善しました。

引用文献

Sierra Bishop, et al. Fertil Steril. 2025. doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.12.015.

論文内容

不育症を経験する女性集団におけるMycoplasmaおよびUreaplasmaなどの感染性病因の有病率を調査し、これら感染症の治療後の出生予後を評価することを目的とした、単施設前向きコホート研究です。2005年から2015年にかけて生殖医療クリニックで評価された1,846人の女性を対象とし、2回以上の連続した妊娠初期流産を経験した1,583人と263人の不妊対照群を6:1でマッチさせました。マッチングは年齢(平均32.6歳、範囲20〜42歳)、人種(白人72%、黒人26%、アジア人またはその他2%)、BMI(平均27.0)、保険分類(民間保険100%)に基づいて行われました。不育症患者の過去の流産歴のうち、ほとんどが生殖補助医療を介さない自然妊娠(1,504/1,583, 95%)でした。
不育症患者には親の核型分析、ホルモンスクリーニング(TSH、黄体期中期プロゲステロン、HbA1c)、自己免疫マーカー(ループスアンチコアグラント、抗リン脂質抗体)、3D生理食塩水超音波子宮鏡による子宮腔評価を含む完全な精査が実施されました。全ての患者はM. hominisおよびU. urealyticumに対する高位子宮頸管培養を受けました。検体採取は合成子宮頸管綿棒で腟壁接触を避けて行い、Boston broth(尿素含有)およびA7寒天培地で10日間培養されました。検査は全期間を通じてLabCorp(Burlington, NC)の単一施設で実施されました。
陽性例には患者本人とパートナーの両方に14日間のドキシサイクリン100mg 1日2回投与が行われ、抗菌薬完了2週間後に初回と同一の方法で治癒判定が実施されました。初回治療で陰性化しなかった症例にはレボフロキサシン500mg 1日1回14日間(アレルギーがある場合はエリスロマイシン500mg 1日2回14日間)が投与されました。当初培養陰性であった患者には経験的抗菌薬投与もマイコプラズマ再検も行われませんでした。妊娠を報告した患者全員に定量hCG検査と妊娠6.5週から10週まで毎週の超音波検査が施行され、10週時点でかかりつけ医に紹介された後、妊娠予後は患者への直接連絡で追跡されました。統計解析は両側Fisher正確検定で行い、有意水準はP<.05、検出力0.80としました。

結果

不育症患者におけるMycoplasma単独感染の有病率は66/1,583(4.2%)で、対照群の1/263(0.01%)と比較して有意に高く(RR 10.9, 95% CI 1.53–78.7, P=.0172)、Ureaplasma感染は249/1,583(15.7%)対26/263(9.89%)でした(RR 1.59, 95% CI 1.09–2.33, P=.0147)。いずれかの感染を有する割合は不育症群で315/1,583(19.9%)、対照群で27/236(10.3%)であり、有意差を認めました(RR 1.94, 95% CI 1.34–2.81, P=.0005)。
ドキシサイクリン初回治療後の治癒率は全体で266/315(84.4%)、Mycoplasma陽性例で61/66(92.4%)、Ureaplasma陽性例で205/249(82.3%)でした。レボフロキサシンによる二次治療を含めた最終治癒率は300/315(95.2%)であり、Ureaplasma感染では237/249(95.2%)、Mycoplasma感染では63/66(95.5%)の治癒率でした。
除菌に成功した300人の不育症患者のうち、2年間の追跡期間中に204人(68.0%)が妊娠し、そのうち156/204(76.5%)が出生に至りました。一方、当初培養陰性であった1,268人の不育症患者では852人(67.2%)が妊娠し、546/852(64.1%)が出生に至りました。初回培養陽性で抗菌薬治療により治癒した不育症患者は、培養陰性の不育症患者と比較して有意に高い出生率を示しました(Mycoplasma:RR 1.22, 95% CI 1.02–1.44, P=.045、Ureaplasma:RR 1.19, 95% CI 1.07–1.31, P=.002)。Mycoplasma除菌後の出生率は78.0%、Ureaplasma除菌後は76.1%でした。

私見

本研究おもしろいですね。Mycoplasma/Ureaplasmaは最近旬のようにでてきているマーカーなので私たちも注意をして観察してきたいと思っています。
Mycoplasma/Ureaplasmaがあくまでサロゲートマーカーであったのではないか?つまり、これらを治療したつもりで慢性子宮内膜炎や子宮内細菌叢異常がよくなって結果につながったのではないかというところです。
培養対象が極めて限定的だったので他の菌がどうだったのか見てみたいなーとおもいます。
治癒確認後の追跡が不十分で、再発リスクなどもあるわけなので、本当に一度の治療でこんなに成績改善するのかな?と思ってしまうところです。
ただ、ここまでビッグデータでの発表なので意識をしながら生殖器細菌叢異常はフォローしていくつもりです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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