不育症

2022.06.03

ビタミンD欠乏は流産リスクを上昇させる(Fertil Steril 2022)

はじめに

反復流産とビタミンD(Am J Reprod Immunol. 2018)」でも触れましたが、ビタミンDは不妊治療施設では比較的よく測定される栄養素の検査となっています。ビタミンDは、生殖医療への影響としては体外受精治療の臨床妊娠率・出生率を関連している可能性、妊娠中への影響として、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、低出生体重児、SGAの発症リスクに関連を示す報告、出生児のADHDリスク、統合失調症リスク、喘息発症リスクと関連を示唆する報告があります。
流産との関連のシステマティックレビュー・メタアナリシスが報告されましたのでご紹介いたします。
下記ブログの血清25(OH)Dレベルの単位ですが、以下で換算してお読みください。
欠乏:<20.9ng/mL≒<52.3nmol/L、充足:>30ng/mL≒>75nmol/L 

ポイント

ビタミンD欠乏症では流産率が上昇することがわかりました。ビタミンD補充すると流産率が低下するかどうかは今回の検討では調査することができませんでした。 

引用文献

Jennifer A. Tamblyn, et al. Fertil Steril 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.04.017 

論文内容

データベース開設から2021年5月までのOvid MEDLINE、Embase、the Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索した。母体ビタミンDと流産、ビタミンD治療と流産の関連を調査した無作為化試験および観察研究を対象としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。 
主要評価項目は流産・反復流産とし、ビタミンD値をリスク予測因子としました。
ビタミンD治療が流産・反復流産リスクを軽減させるかどうかも評価しました。 

結果 

902件の研究のうち、10件(n=7,663;4件の無作為化対照試験(n=666)および6件の観察研究(n=6,997))を対象としました。ビタミンD欠乏症(<50nmol/L)と診断された女性は、ビタミンD充足(>75nmol/L)の女性と比較して流産リスクが高くなりました(オッズ比、1.94;95%CI、1.25-3.02;4研究;n=3,674;I2=18%)。ビタミンD不足(50-75 nmol/L)および欠乏(<50 nmol/L)の女性を、ビタミンD充足(>75 nmol/L)の女性と比較した複合解析では、流産との関連が認められました(オッズ比、1.60;95%CI、1.11-2.30;6試験;n=6,338;I2=35%)。4件の無作為化対照試験で流産に対するビタミンD治療の効果が評価されましたが、試験の異質性、データの質、報告の偏りにより、比較やメタアナリシスはできませんでした。 

私見

ビタミンDは安全で低コストであることを考えると、ビタミンD補充の効果がわずかだとしても公衆衛生上は有用ではないかとしています。まだまだ、妊婦およびプレコンセプションに対するビタミンD管理に対する基準も定まっていないですし、政策としても問題視されることも少ないです。
妊娠前から妊娠中、そして女性のヘルスケアにおいてビタミンD補充を推奨するエビデンスが整ってきた印象を受けます。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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