不育症

2022.07.26

AMH値は自然妊娠の流産と関係しますか。(Fertil Steril. 2018)

はじめに

卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解
卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解_その1
卵巣予備能検査と解釈のアメリカ生殖医学会の見解(Fertil Steril. 2020:その2) 
で、卵巣予備能は不妊症の予知にも、タイミング、人工授精の成績にも影響しないことがわかっています。ただし、AMHが異常に低い値に出会った場合、月経周期が乱れてしまうことも多くなりますし、体外受精を行っても良質の受精胚と出会えるまで体外受精回数が多くなることがわかっています。そう考えると、本当にAMHが一般妊娠の予後に影響を与えてもおかしくないのではないか?と考えてしまいます。そういう目線から論文を読んでいくと、AMH値と流産の関係を示した報告を見つけました。
非常に面白い観点からの推敲でしたのでご紹介させていただきます。 

ポイント

AMH 0.4ng/mL未満であれば、AMH 1ng/mL以上の女性より自然妊娠した場合の流産リスクが上昇しました。AMHが不妊との関連がないことが一般的な理解であり、流産との関連があるかどうかは今後注視する必要があります。 

引用文献

Brianna M Lyttle Schumacher, et al. Fertil Steril. 2018 Jun;109(6):1065-1071.e1. doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.01.039. 

論文内容

卵巣予備能の指標であるAMH値と自然妊娠の流産との関連性があるかどうかを調査したプロスペクティブ・コホート研究です。不妊症、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症の既往がなく、自然妊娠した30歳から44歳の女性(n=533)を対象としました。主要評価項目として自然流産(妊娠20週以前)としました。 

結果 

女性年齢、人種、流産歴、BMIを調整したところ、流産のリスクはAMHの増加と共に減少しました(AMHの自然対数の単位増加あたりのリスク比 0.83; 95%CI, 0.73-0.94)。AMH 0.4 ng/mL以下の女性では、AMH 1 ng/mL以上の女性の2倍以上で流産率が増加しました(ハザード比、2.3;95% CI、1.3-4.3)。 

私見

AMH値は流産リスクと逆相関するという論文は過去にもあります。 

  • Levi A, et al. Fertil Steril. 2001; 76: 666-669
  • Trout S, et al. Fertil Steril. 2000; 74: 335-337
  • Elter K, et al. Gynecol Endocrinol. 2005; 21: 33-37 

一方、AMHは流産リスクとは関連がないことが示唆されている論文もあります。 

  • Zarek S, et al. Fertil Steril. 2016; 105: 946-952 
  • Pereira N, et al. Womens Health. 2016; 12: 185-192
  • Pereira N, et al. J Assist Reprod Genet. 2015; 32: 985-990

今回のディスカッションでも触れられていますが、自然妊娠で流産率が上がるのは受精胚の質による影響か、内膜因子の影響かはわかっていません。
ホルモンの乱れという観点からはPCOSや肥満女性で生化学妊娠が増えるメカニズムと似ている気もしますし、通常の体外受精のロジックから考えると卵子の質の影響であってもおかしくないなと思ってしまいます。面白いテーマですので当院データでも振り返ってみたいと思います。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 流産、死産

# マーカー・遺伝子

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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