はじめに
ホルモン調整周期凍結融解胚移植の胚移植日の血清プロゲステロン値が低すぎると胚移植成績が低下することが報告されています。ただし、どのような症例でプロゲステロン値が低下するかわかっておらず、事前予測が立てられません。そこで、プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロン(デュファストン®)を加えた黄体補充を行うことにより、プロゲステロン腟剤の低プロゲステロン状態をフォローして胚移植成績が向上しないか調査した報告をご紹介いたします。
ポイント
プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロン(デュファストン®)を加えたホルモン調整周期凍結融解胚移植は、プロゲステロン腟剤単独に比べて出生率が高く、流産率が低いことが分かりました
引用文献
Lan N Vuong, et al. Hum Reprod. 2021. Jun 18;36(7):1821-1831. doi: 10.1093/humrep/deab093.
論文内容
2019年6月26日から2020年3月30日までベトナムの生殖医療施設で実施された前向きコホート研究です。ホルモン調整周期凍結融解胚移植を受けた女性1,364名を対象としました。黄体補充は、子宮内膜の厚さが8mm以上になった時点で開始しました。プロゲステロン腟剤400mg1日2回を試験前半に実施、プロゲステロン腟剤400mg1日2回+経口ジドロゲステロン10mg1日2回を試験後半に実施しました。黄体補充は妊娠7週まで継続しました。主要評価項目は初回ホルモン調整周期凍結融解胚移植の出生率であり、副次評価項目は妊娠12週未満の初期流産としました。
結果
プロゲステロン腟剤+経口ジドロゲステロン群732名、プロゲステロン腟剤群632名が参加しました。出生率はそれぞれ46.3% vs.41.3%(RR 1.12, 95% CI 0.99-1.27, P = 0.06; multivariate analysis RR 1.30 (95% CI 1.01-1.68), P = 0.03)でした。妊娠12週未満の初期流産率はプロゲステロン腟剤+経口ジドロゲステロン群がプロゲステロン腟剤群に比べて低くなりました(3.4% vs. 6.6%、RR 0.51, 95% CI 0.32-0.83; P = 0.009)。
私見
ホルモン調整周期凍結融解胚移植は排卵を抑制しているため、黄体が存在せず、プロゲステロン値は腟剤・注射・経口投与でのみ補填されます。プロゲステロン注射は国内での製造が2022年末で終了となっていますので、腟剤と経口薬での管理が国内ではメインとなります。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。