はじめに
体外受精での一卵性多胎の発生率、リスク因子、再発率を調査した報告をご紹介いたします。
ポイント
体外受精において一卵性双胎妊娠は1-2%程度、一卵性品胎妊娠は0.05%程度で発生します。一卵性多胎の再発率は0.0001%と非常に稀ですが、胚盤胞移植、アシストハッチングはリスク因子であり、顕微授精、着床前検査、凍結融解胚移植は関係なさそうでした。
引用文献
- Cheryl S Chu, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Feb 7. doi: 10.1007/s10815-023-02737-8.
2004年から2017年にSociety for Assisted Reproductive Technology(SART)のClinical Outcomes Reporting System(CORS)に登録された臨床妊娠65,664回の単一胚移植を対象とする後向きコホート研究を実施しました。主要評価項目は一卵性多胎(体外受精)の再発リスクとし、副次評価項目は一卵性多胎のリスク因子を同定することとしました。 - Jessica R Kanter, et al. Obstet Gynecol. 2015 Jan;125(1):111-117. doi: 10.1097/AOG.0000000000000579.
2003年から2012年に新鮮単一胚移植妊娠28,596例を対象とした後向きコホート研究を実施しました。
論文内容
研究1の結果
一卵性双胎妊娠は1325例(2.00%)であり、一卵性品胎妊娠は30例(0.05%)でした。一卵性多胎再発は2名(0.0001%)でした。一卵性多胎のリスク因子は、胚盤胞移植(OR 1.23, 95% CI 1.04-1.47, P = 0.0176)およびアシストハッチング(OR 1.23, 95% CI 1.05-1.44, P = 0.0081)でした。ICSI、PGT、凍結融解胚移植は関連性がありませんでした。
研究2の結果
単一胚移植後の一卵性双胎率は、5-6日目胚移植よりも2-3日目胚移植の方が低くなりました(1.71%、95%CI 1.45-1.98, n=162 vs. 2.50%、95%CI 2.28-2.73, n=472)。2-3日目胚移植ではアシストハッチングにより一卵性双胎リスクが上昇(aRR 2.16,95% CI 1.53-3.06)し、ICSIによりリスクが低下しました(aRR 0.60,95% CI 0.42-0.85)。5-6日目胚移植では、1回以上の妊娠歴があると一卵性双胎のリスクが上昇しました(aRR 1.26、95%CI 1.03-1.53)。
私見
この論文①では一卵性双胎1325妊娠のうち、829名(62.5%)が性別一緒の双子、50名(3.7%)が性別不一致の双子、169名(12.7%)が出生時に単胎、252名が中絶、25名が経過不明でした。一卵性品胎30妊娠のうち、5名(16.6%)が性別一緒の3つ子、3名(10%)が性別不一致の3つ子、6名(20%)が性別一緒の双子、1名(3.3%)が性別不一致の双子、単胎は3名、11名が中絶、1名が経過不明でした。
意外と性別が異なる一卵性多胎が多いことに驚きました。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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