不育症

2023.06.20

ネオ・セルフ抗体の不妊症患者での有病率(J Reprod Immunol. 2023)

はじめに

不妊症患者でネオ・セルフ抗体(抗β2GPI/HLA-DR抗体:以下ネオ・セルフ抗体)は、①どの程度陽性となるのか、②陽性であった場合に治療対象となるのか、③どのような治療が奏功するのか、というのが臨床現場での課題と考えています。今回、国内から不妊症患者のネオ・セルフ抗体との関連を示した報告をご紹介いたします。

ポイント

ネオ・セルフ抗体の不妊女性では17.9%が陽性となり、当研究の母集団では女性年齢、BMI、経妊数、経産数、反復流産とのネオ・セルフ抗体陽性の関連性はなく、子宮内膜症・反復着床不全での関連性が示唆されました。

引用文献

Yosuke Ono, et al. J Reprod Immunol. 2023 May 18;158:103955. doi: 10.1016/j.jri.2023.103955.

論文内容

ネオ・セルフ抗体(抗β2GPI/HLA-DR抗体)が不妊症と関連するかどうかを評価するため、2020年7月から2021年12月に単一施設にて不妊症女性224名を対象に患者背景や治療結果との関連を調査した前向き研究です。

結果

  • 不妊女性224名中40名(17.9%)ネオ・セルフ抗体陽性
    体外受精実施女性148名中23名(15.5%)ネオ・セルフ抗体陽性 
    不妊女性の66.1%が体外受精を実施 
  • 女性年齢、BMI、経妊数、経産数、反復流産とのネオ・セルフ抗体陽性関連性なし 
  • 子宮内膜症女性45名のネオ・セルフ抗体値は、子宮内膜症がない女性179名よりも高い(中央値32.3U、6.5-531 U vs. 20.4U, 0-162800 U; P < 0.001)。子宮内膜症の有病率は、ネオ・セルフ抗体陽性女性では、抗体陰性女性よりも高い(32.5%, 13/40 vs. 17.4%, 32/184; P = 0.048)。 
    ロジスティック回帰分析でも、子宮内膜症は、不妊症女性のネオ・セルフ抗体陽性率と関連あり(aOR 3.01、95%CI 1.30-6.99;P = 0.010)。 
  • 体外受精を受けた患者背景 
    女性年齢 36.5歳、BMI 22.7、経妊数 1.5、経産数 0.3、反復流産 21(14.2%)。反復着床不全の女性は148名中36名(24.3%)。 
  • 反復着床不全女性36名 反復着床不全でない112名のネオ・セルフ抗体値には差なし(中央値16.7U、0-162800U vs. 21.8U, 0-862.9 U; P = 0.756)。反復着床不全は、ネオ・セルフ抗体陽性である女性(43.5%、10/23)は、陰性である女性(20.8%、26/125;P = 0.032)より高い。ロジスティック回帰分析により、反復着床不全はネオ・セルフ抗体陽性と関連あり(aOR 2.92, 95%CI 1.05-8.11; P = 0.040)。 

※ネオ・セルフ抗体のカットオフ値:73.3U 
※反復着床不全の定義は生化学的流産を除く3回以上の着床不全 

私見

現在のカットオフ値(73.3U)では不妊症女性の17.9%が陽性となるため、5-6人に1人が陽性となる印象です。よって、ネオ・セルフ抗体陽性なら抗凝固療法などの治療を行った方がよいというのは少し違うような印象を受けます(学会発表では治療との関連を報告されていましたが、今回は患者背景とネオ・セルフ抗体の関連性のみの報告です)。 
また、子宮内膜症と周産期予後との報告は散見しますが、元来、子宮内膜症は子宮内膜側での着床不全の原因とはならないと考えられていますので、ネオ・セルフ抗体陽性女性が子宮内膜症・反復着床不全で陽性となったのは、別病態なのか、交絡因子なのか、今後のリサーチが楽しみです。 
反復着床不全患者のネオ・セルフ抗体値に差がないのに、陽性率だけ差がつくのはカットオフ値の問題かもしれません。 

ネオ・セルフ抗体(β2GPI/HLA-DR複合体に対するネオ・セルフ抗体)について(Arthritis Rheumatol. 2020)

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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