はじめに
血清プロゲステロン濃度が凍結融解胚移植成績の予測因子となりうるかどうかは議論が分かれています。2021年に公表されたシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。
ポイント
凍結融解胚移植の胚着床と妊娠初期に最適な内分泌環境を確保するために必要なプロゲステロンの、臨床的に重要な黄体血清濃度の最小値が存在する可能性があります。
引用文献
Pedro Melo, et al. Fertil Steril. 2021 Dec;116(6):1534-1556. doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.07.002.
論文内容
2021年3月までにMEDLINE、PubMed、CINAHL、EMBASE、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、ClinicalTrials.govを検索し、凍結融解胚移植実施前後に血清黄体プロゲステロン値を測定したコホート研究を特定しました。
評価項目は継続妊娠率または出生率、臨床的妊娠率、流産率としました。
結果
血清プロゲステロン値のカットオフ 10ng/mLを解析した研究では、血清プロゲステロン値が高いほど継続妊娠率または出生率が高いことと関連していました(RR 1.47、95%CI 1.28~1.70)、臨床妊娠率が高く(RR 1.31、95%CI 1.16~1.49)、流産リスクが低くなりました(RR 0.62、95%CI 0.50~0.77)。
ただし、プロゲステロンのカットオフ 10ng/mLが凍結融解胚移植の転帰と関連するかどうかについては、研究間の異質性が高く、CIが広いため、すべての研究を含む感度分析では不確実でした。
私見
過去にもさまざまな議論があります。
着床段階は「対峙・接着/浸潤/増殖」の各段階で必要な子宮内膜プロゲステロン閾値が異なる可能性もありますし、個々におけるPRの発現状況などによっても変化する可能性があります。正倍数性の受精胚での研究がさらに蓄積されると、結論が変わってくるかもしれません。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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