体外受精

2023.02.08

一卵性多胎(体外受精)のリスク因子(論文紹介)

はじめに

体外受精での一卵性多胎の発生率、リスク因子、再発率を調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

体外受精において一卵性双胎妊娠は1-2%程度、一卵性品胎妊娠は0.05%程度で発生します。一卵性多胎の再発率は0.0001%と非常に稀ですが、胚盤胞移植、アシストハッチングはリスク因子であり、顕微授精、着床前検査、凍結融解胚移植は関係なさそうでした。 

引用文献

  1. Cheryl S Chu, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Feb 7. doi: 10.1007/s10815-023-02737-8. 
    2004年から2017年にSociety for Assisted Reproductive Technology(SART)のClinical Outcomes Reporting System(CORS)に登録された臨床妊娠65,664回の単一胚移植を対象とする後向きコホート研究を実施しました。主要評価項目は一卵性多胎(体外受精)の再発リスクとし、副次評価項目は一卵性多胎のリスク因子を同定することとしました。 
  2. Jessica R Kanter, et al. Obstet Gynecol. 2015 Jan;125(1):111-117. doi: 10.1097/AOG.0000000000000579. 
    2003年から2012年に新鮮単一胚移植妊娠28,596例を対象とした後向きコホート研究を実施しました。 

論文内容

研究1の結果 
一卵性双胎妊娠は1325例(2.00%)であり、一卵性品胎妊娠は30例(0.05%)でした。一卵性多胎再発は2名(0.0001%)でした。一卵性多胎のリスク因子は、胚盤胞移植(OR 1.23, 95% CI 1.04-1.47, P = 0.0176)およびアシストハッチング(OR 1.23, 95% CI 1.05-1.44, P = 0.0081)でした。ICSI、PGT、凍結融解胚移植は関連性がありませんでした。 

研究2の結果 
単一胚移植後の一卵性双胎率は、5-6日目胚移植よりも2-3日目胚移植の方が低くなりました(1.71%、95%CI 1.45-1.98, n=162 vs. 2.50%、95%CI 2.28-2.73, n=472)。2-3日目胚移植ではアシストハッチングにより一卵性双胎リスクが上昇(aRR 2.16,95% CI 1.53-3.06)し、ICSIによりリスクが低下しました(aRR 0.60,95% CI 0.42-0.85)。5-6日目胚移植では、1回以上の妊娠歴があると一卵性双胎のリスクが上昇しました(aRR 1.26、95%CI 1.03-1.53)。 

私見

この論文①では一卵性双胎1325妊娠のうち、829名(62.5%)が性別一緒の双子、50名(3.7%)が性別不一致の双子、169名(12.7%)が出生時に単胎、252名が中絶、25名が経過不明でした。一卵性品胎30妊娠のうち、5名(16.6%)が性別一緒の3つ子、3名(10%)が性別不一致の3つ子、6名(20%)が性別一緒の双子、1名(3.3%)が性別不一致の双子、単胎は3名、11名が中絶、1名が経過不明でした。 
意外と性別が異なる一卵性多胎が多いことに驚きました。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多胎

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

IVF-FETにおけるvanishing twin・減胎の周産期予後(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.06.09

vanishing twinが凍結融解胚移植における単胎出生転帰に及ぼす影響(Fertil Steril. 2025)

2025.10.08

単一胚移植後の一卵性双胎発生率とリスク因子(Hum Reprod. 2025)

2025.09.24

日本の生殖補助医療における多胚移植率と多胎率の推移(J Obstet Gynaecol Res. 2025)

2025.05.13

一卵性双胎は胚盤胞のグレードと関連する?(Am J Obstet Gynecol. 2021)

2021.09.06

体外受精の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)

2024.11.07

卵巣刺激に用いるHMG製剤とは

2021.02.24

今月の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

2021.09.11

睡眠と精液検査② (論文紹介)

2022.08.13

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03