体外受精

2025.04.08

凍結融解胚移植における内膜調整プロトコルの違い(Cochrane Database Syst Rev. 2017)

はじめに

凍結融解胚移植の内膜調整、主に①排卵周期、②ホルモン補充周期に分けられ、排卵周期はhCGトリガーをかけるか、黄体補充を行うかが次の選択として考えられ、ホルモン補充は事前にGnRHaによる抑制をかけるかどうかが事前選択として考えられます。
どの周期法が最も効果的で安全なのかについては、依然として不確実性が残っています。
いまのところ、内膜調整法における妊娠成績には差がないというのが一般的であり、こちらを報告したコクランレビューをご紹介いたします。

ポイント

規則的な排卵周期を持つ不妊女性の凍結融解胚移植において、特定の周期法(排卵周期、hCGトリガー排卵周期、GnRHa抑制あり・なしのホルモン補充周期)の優位性を示す十分なエビデンスはありません。

引用文献

Tarek Ghobara, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jul 5;7(7):CD003414. doi: 10.1002/14651858.

論文内容

凍結融解胚移植のための様々な内膜調整の有効性と安全性を比較することです。
2016年12月13日までに発表された関連するランダム化比較試験(RCT)を検索しました。凍結融解胚移植のための様々な内膜調整法を比較する研究を対象とし、主要評価項目は出生率と流産率としました。

結果

18件RCT(3815人の女性)を含め、エビデンスの質は低いまたは非常に低いと評価されました。排卵障害女性に特化したデータはありませんでした。
自然周期凍結融解胚移植とHRT凍結融解胚移植療法の比較では、生産率、流産率、継続妊娠率の明確な報告はなく、多胎妊娠率に差はありませんでした(OR 2.48、95%CI 0.09〜68.14、1 RCT、21名)。
自然周期凍結融解胚移植とGnRHaによる下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植の比較では、出生率(OR 0.77、95%CI 0.39〜1.53、1 RCT、159名)や多胎妊娠率(OR 0.58、95%CI 0.13〜2.50、1 RCT、159人)に差はありませんでした。
自然周期凍結融解胚移植とhCGトリガー下排卵周期凍結融解胚移植の比較では、出生率(OR 0.55、95%CI 0.16〜1.93、1 RCT、60名)や流産率(OR 0.20、95%CI 0.01〜4.13、1 RCT、168名)に差はありませんでしたが、継続妊娠率は自然周期の方が高い可能性が示されました(OR 2.44、95%CI 1.03〜5.76、1 RCT、168名)。
hCGトリガー下排卵周期凍結融解胚移植とHRT凍結融解胚移植の比較では、出生率(OR 1.34、95%CI 0.88〜2.05、1 RCT、959人)や継続妊娠率(OR 1.21、95%CI 0.80〜1.83、1 RCT、959名)に差はありませんでした。
hCGトリガー下排卵周期凍結融解胚移植と下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植の比較でも、出生率(OR 1.11、95%CI 0.66〜1.87、1 RCT、236名)や流産率(OR 0.74、95%CI 0.25〜2.19、1 RCT、236名)に差はありませんでした。
HRT凍結融解胚移植と下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植の比較では、下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植において出生率が高くなりましたが(OR 0.10、95%CI 0.04〜0.30、1 RCT、75名)、流産率(OR 0.64、95%CI 0.37〜1.12、6 RCTs、991名)や継続妊娠率(OR 1.72、95%CI 0.61〜4.85、1 RCT、106名)には差がありませんでした。
hCGトリガー下排卵周期凍結融解胚移植のサブタイプ比較では、hMG単独がクロミフェン+hMG併用よりも生産率が高く(OR 2.49、95%CI 1.07〜5.80、1 RCT、209名)、流産率(OR 1.33、95%CI 0.35〜5.09、1 RCT、209名)や多胎妊娠率(OR 1.41、95%CI 0.31〜6.48、1 RCT、209人)には差がありませんでした。

私見

基本、内膜調整法に関しては排卵がある女性では生殖成績に差がないというのが一般的な見解となっていますが、まだまだエビデンスレベルが低いという結果となっています。
「HRT凍結融解胚移植と下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植の比較では、下垂体抑制を伴うHRT凍結融解胚移植において出生率が高くなりました」という根拠はT El-Toukhyらの論文になりますが、データをみていると分割期胚を移植している点、現在の一般的な生殖成績より低い時代のRCTであることがわかります。成績がおちるディスカッションでは、内膜にあるLH受容体を介した影響やエストラジオール投与下の早発排卵についても触れられています。(T El-Toukhy, et al. Hum Reprod. 2004 Apr;19(4):874-9. doi: 10.1093/humrep/deh183.)反復不成功患者には試す価値はあるかもしれませんね。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 胚移植(ET)

# 排卵周期下胚移植

# ホルモン調整周期下胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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