体外受精

2022.04.21

FSHアンタゴニスト法のhCGトリガー直後のプロゲステロン値(J Assist Reprod Genet. 2022)

はじめに

hCGトリガー後の超初期黄体ホルモンの動きを調べた論文は、意外と多くありません。新鮮胚移植を実施する際に移植成績が低下するのは、早期にプロゲステロンが上昇することにより内膜受容能と受精胚発育スピードにずれが生じるためと考えられています。通常排卵したらP4値が1 ng/mlを超えるくらいの印象ですが、実際はどのように変化するのでしょうか。

ポイント

hCGトリガー後1時間からプロゲステロン値は上昇を開始し、トリガー後4時間で1.45ng/ml、8時間で3.04ng/mlと早期から上昇することが明らかになりました。この早期上昇により新鮮胚移植では内膜受容能とのずれが生じる可能性があります。

引用文献

Carol Coughlan, et al. J Assist Reprod Genet. 2022. DOI: 10.1007/s10815-022-02474-4

論文内容

2021年2月から2021年5月までUAEの生殖医療施設においてFSHアンタゴニスト法で治療を行う患者11名にhCGトリガー日の朝(10時〜12時)、hCGトリガー直前、hCGトリガー後1時間、2時間、36時間に血液サンプルを採取しました。リコンビナントFSHを用いたfixedアンタゴニスト法で、3個以上の卵胞が17mmに達した時点で、5000IUのuhCGを皮下投与しています。患者背景として平均33.3歳、BMI 23.8、AMH3.1 ng/ml、卵巣刺激期間は9.7日、total FSH量 2392.1単位、回収卵子 11.5個、成熟卵子数 10.2個の場合となっています。

結果

hCGトリガー後、トリガー後1時間(P4 0.57 ng/ml, p < 0.05)、トリガー後2時間(P4 0.88 ng/ml, p < 0.001)、採卵日(P4 9.68 ng/ml, p < 0.001)と早くから血清プロゲステロン値の上昇が確認されました。ゴンペルツ曲線によれば、トリガー後4時間の血清プロゲステロン値の予測値は1.45ng/ml、トリガー後8時間は3.04ng/ml、トリガー後12時間は4.8ng/mlと考えられました。

私見

患者様というより、医療者が学ぶことが多い論文ですね。
FSHアンタゴニスト法hCGトリガーではLHはほぼ不変、FSHは採卵日に軽度低下するがほぼ不変、E2は採卵日に低下し、そのほかのhCGトリガー日の朝(10時〜12時)、hCGトリガー直前、hCGトリガー後1時間、2時間は不変であることが印象的でした。
プロゲステロンが比較的早期から上昇することを考えると、回収卵10個程度の新鮮胚移植を行う場合、ERAのずれで考えるとearly receptiveからPre-receptiveで戻すようなイメージなのだと感じました。
同じような論文が、2本くらい出ています。(Friis Wang N, et al. Hum Reprod Oxf Engl. 2019;34:942–8. Vuong LN, et al. Hum Reprod Oxf Engl. 2020;35:157–66. この2本は同じグループ)

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# GnRHアンタゴニスト

# hCG

# 排卵誘発、トリガー

# 新鮮胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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