一般不妊

2021.10.18

卵巣妊娠について(Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2011)

はじめに

卵巣性妊娠は異所性妊娠(子宮外妊娠)の0.15〜3%と言われている稀な疾患です。体外受精と卵巣妊娠の症例報告は散見されますが、数多い合併症ではないため多くの傾向を示したものはありません。体外受精患者ではありませんが49例の卵巣妊娠症例をまとめた論文がありましたのでご紹介させていただきます。 

ポイント

卵巣妊娠は異所性妊娠の1.59%を占め、子宮内膜症や腹部手術既往、体外受精などがリスク因子として挙げられます。事前にリスク因子を把握し、適切な治療プランを検討することが重要です。 

引用文献

Choi HJ, et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2011. DOI: 10.1016/j.ejogrb.2011.04.015 

論文内容

1996年1月から2009年12月の間に2施設で手術を実施した49例の卵巣妊娠をレトロスペクティブに分析しました。卵巣妊娠の発生率は、異所性妊娠全体の1.59%(49/3081)で、45/49名(91.8%)が原発性卵巣妊娠でした。女性平均年齢は30.7±4.4歳で、平均妊娠回数は0.63±0.8回でした。主な症状は、腹痛(42.9%)と性器出血(28.6%)でした。超音波検査では卵巣周囲の液体貯留と卵巣容積の拡大が多く見られました。 
卵巣妊娠の正確な原因はわかっていませんが、体外受精における異所性妊娠リスクとしては子宮腔内に深く移植した受精胚の逆移動、大量の培養液の使用や胚移植時の注入圧、卵管性不妊などが考えられます。今回の卵巣妊娠のリスク因子として考えられるものを抽出すると子宮内膜症(16例)と腹部手術既往(19例)、体外受精(8例)、排卵誘発(4例)、PID(4例)、IUD使用(2例)、巨大子宮筋腫(2例)、双角子宮(1例)、弓状子宮(1例)でした。 

私見

やはり、卵巣妊娠は稀な疾患だけあり、まとまった症例の報告はほとんど見つけられませんでした。体外受精での異所性妊娠は数が多くないけれど見逃してはいけない疾患です。リスク因子を事前に抽出し患者様に正しい情報提供をするとともに回避できる治療プランを検討することが好ましいのかもしれません。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 異所性妊娠

# 疫学研究・データベース

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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