はじめに
レコベル皮下注ペンの日本臨床試験の結果を紹介します。ヒト由来(PER.C6; Crucell)を用いたリコンビナントFSHであるfollitropin delta(レコベル皮下注ペン)は、CHO(ハムスター)由来のリコンビナントFSHよりも全体的にシアル酸含量が高いグリコシル化プロファイルを有しています。そのため、クリアランスが低く、半減期が長い特徴があります。
ポイント
新規リコンビナントFSH製剤follitropin delta(レコベル)の日本人女性を対象とした臨床試験では、AMH値に基づく用量設定により、安全性を維持しながら効果的な卵巣刺激が可能であることが示されました。特にOHSSのリスクが高いAMH高値群で安全性が確認されました。
引用文献
Osamu Ishihara et al. Fertil Steril. 2020. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2020.09.134
論文内容
日本で実施された多施設無作為化介入実施者単盲試験です。AMH値(低値5.0〜14.9pmol/L、高値15.0〜44.9pmol/L)で層別化しており、158名の日本人女性(20〜39歳)を対象としました。
月経周期の2〜3日目に、患者は6mg、9mg、または12mgのfollitropin delta(レコベル、72mg/2.16mL; Ferring Pharmaceuticals)、または150IU/日のfollitropin beta(フォリスチム、900IU/1.08mL; MSD)の1日量を固定化したリコンビナントFSHアンタゴニスト法にて卵巣刺激を行いました。
アンタゴニスト(ガニレスト;MSD)を1日量0.25mgで刺激6日目に固定で開始し、トリガー日まで実施しました。卵胞径17mm以上が3つ以上観察された場合に5,000IUのhCGトリガーを行っています。
卵巣反応不良(刺激10日目に径10mm以上の卵胞が3個未満)の場合は治療を中止しています。OHSSが疑わしい場合(卵胞径12mm以上の卵胞数が25〜35個の場合)も治療を中止するか点鼻トリガーとして採卵し、受精胚移植対象から外しています。受精胚移植は新鮮胚day5移植としています。
結果
6mg/日、9mg/日、12mg/日のfollitropin delta群で回収卵子数はそれぞれ7.0±4.1個、9.1±5.6個、11.6±5.6個であり、有意な用量相関が認められ、各AMH層内でも同様の結果となりました。また、follitropin deltaによる刺激終了時の血清エストラジオール、インヒビンA、プロゲステロンにも有意な用量相関が認められました。
Follitropin deltaを用いた開始周期あたりの心拍の確認できた妊娠率は、6mg/日で19%、9mg/日で20%、12mg/日で25%でした。早期中等度/重度のOHSS発生率は、follitropin deltaでは6mg/日で8%、9mg/日で8%、12mg/日で13%で、OHSS発症例の82%がAMHの高い群でした。
私見
ESHREの卵巣刺激ガイドラインでもレコベルは他のリコンビナントFSH製剤と同等の効果とされています。現在は、体重・AMHで用量設定されていますが、今後どのような使い方におちついていくのか経過が楽しみです。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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