男性不妊

2021.09.15

精液所見は季節や午前・午後で変わる?(Chronobiol Int. 2018)

はじめに

「夫婦生活をもつのは、朝がいいんですよね?」と患者様に尋ねられて、すぐに答えられませんでした。その情報はSNSを見ていたら出てきた…と仰っていたので根拠を調べてみたところ、精液所見が朝がよいという論文が出どころであることがわかりました。何を調べた論文かというと、サーカディアンリズムやサーカニュアルリズムが精液所見に影響を与えるかどうかを調べた報告をご紹介いたします。

ポイント

精液所見は時間帯や季節によって変動するのか?スイスの大規模研究では早朝採取の精液で精子濃度や総精子数が高く、春に精子数が増加する傾向が示されました。ただし研究間で結果が異なり、現時点では明確な結論は出ていません。

引用文献

Min Xie, et al. Chronobiol Int. 2018. DOI: 10.1080/07420528.2018.1483942

論文内容

1994年-2015年に、スイスのチューリッヒ大学病院で採取された7,068人の男性(平均年齢は37±7歳:18〜69歳)の12,245個の精液サンプル(除外:(1)化学療法・放射線療法前後、(2)精管切除後、(3)TESE/MESA、(4)無精子症)を、精子濃度、総精子数、進行性運動率、正常形態率について概日変化と季節変化を後方視的に検討しました。
精液採取は病院内もしくは自宅採取し一時間以内に持参してもらっています。統計的評価にはMann-Whitney U検定と重回帰分析を用いています。

結果

早朝7時30分前に採取した精液サンプルでは、精子濃度、総精子数、正常形態率が最も高く、いずれも統計的に有意でした。進行性運動率は時間による変化はありませんでした。
季節変動については、精子濃度と総精子数は春に有意な増加が見られ、夏には有意な減少を認めました。正常形態率が最も高かったのは夏でした。進行性運動率については、有意な季節変動は認めませんでした。
精液所見は、サーカディアンリズムとサーカニュアルリズムに影響を受けます。

私見

この論文の精液検査時間は7時30分前、7:31-8:30、8:31-10:00、10:01-13:00、13:01以降の5群ですので、早朝と夜との比較でないことをご理解いただくと、夜より朝の夫婦生活は妊娠率が高いというのは拡大解釈なのではないか?と思っています。
季節変動はスイスと日本では環境が異なりますので参考程度になさってください。
クリニック内での精液採取の時間(例えば、朝は採卵が多い、夕方は人工授精できないなど)が交絡因子である可能性もあります。
Cagnacci Aらが54名の男性で比較した過去の論文では午前より午後の方が精液所見がよいという結論になっていますので今回の論文とは反対の結果となっています(Hum Reprod. 1999)。この論文は症例数が少ないですが、同一男性が午前・午後で精液検査を実施しているので、交絡因子は少ないのではないかと感じています。
現状では、患者さまに午前・午後どちらの精液所見が良いのでしょうか?と聞かれたら、結論が出ていませんというのが妥当な返答かもしれません。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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