男性不妊

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

はじめに

民族や遺伝的背景が精液所見に与える影響については、あまり知られていません。アジア人男性では、ヒスパニック系や非ヒスパニック系の白人男性と比較して、精巣実質重量↓、アンドロステロングルクロニド濃度↓、テストステロン産生率↓などが報告されています。また、ヨーロッパは精液所見がよいとされていますが、国内の九州と北海道で所見に差があるかどうかなどは、あまり意識したことがありませんでした。調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

日本の4都市で妊娠可能男性の精液所見を調査。地域差はわずかで、民族性や遺伝的背景は精液所見に強く影響しないことが示されました。WHO基準と比較すると精液量がやや少ない傾向が見られました。

引用文献

Teruaki Iwamoto, et al. BMJ Open. 2013.DOI: 10.1136/bmjopen-2012-002223

論文内容

日本の札幌、大阪、金沢、福岡で不妊治療を実施していない妊婦に声をかけ、そのパートナー(20~45歳 日本出身男性:792名、年齢中央値31.4歳)の精液検査を1999年から2002年にかけて実施しました。

結果

精液量、運動率、正常形態率は都市間でやや差がありましたが、精子濃度や総精子数には差は認めませんでした。4都市全体でみると、精子濃度が500万/ml以下 1.2%、1,000万/ml以下 2.1%、1,500万/ml以下 3.8%、4,000万/ml以下 16.3%でした。正常形態率は14.7%の男性が5%未満でした。 
日本の札幌、大阪、金沢、福岡での妊娠可能男性の精液所見では、わずかな地域差が認められました。民族性や遺伝的背景は精液所見に強く影響しないことがわかりました。 

項目単位症例数5th centile 50th centile95th centile
WHO
2020
国内
4都市
WHO
2020
国内
4都市
WHO
2020
国内
4都市
WHO
2020
国内
4都市
精液量ml3,5867921.41336.26
精子濃度百万/ml3,58779216186684208257
総精子数百万3,5847923938210239701818
運動率%3,4887924231646690100

私見

国内の妊娠可能男性の精液所見を知るうえで、すごく重要な論文だと思います。WHO2020と比較してみました。
日本のデータでは精液量が少ないですね。
WHOの基準になかなか日本人のデータが組み込まれないなーと思い論文を探している時にこの論文を見つけました。おそらく、2010年以前のデータであったこと、妊娠可能までの期間1年未満の男性が87.4%と全例ではなかったことが含まれなかった理由なんだと思っています。それにしても患者様に国内データで説明するには、とても重宝する報告ですね。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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