男性不妊

2021.09.10

2020年精液検査の基準値改訂(Andrology. 2021)

はじめに

精液評価ガイドラインは一定の期間でアップデートされます。
現在の精液所見は2020年に改訂されましたが、それ以前との違いをご紹介いたします。

ポイント

WHO2010の精液評価ガイドラインから11年を経て、WHO2020では12カ国3,500人以上のデータをもとに妊孕可能男性の精液基準値が更新されました。精子濃度1,600万/ml、運動率42%が新たな下限基準値となっています。 

引用文献

Martin J Campbell, et al. Andrology. 2021. DOI: 10.1111/andr.12983. 

論文内容

WHOの妊孕可能男性の精液検査の下限基準値が更新されました。 
妊娠までの期間:12ヶ月未満 
禁欲期間:2日―7日 

項目 単位 WHO1999 WHO2010 WHO2020 
第4版 第5版 第6版 
精液量 ml 2ml 1.5ml 1.4ml 
精子濃度 個/ml 2,000万 1,500万 1,600 
総精子数 個 4,000万 3,900万 3,900 
運動率 50% 40% 42% 

WHO 2010の精液評価ガイドラインが発表されてから11年が経過し、そのガイドラインが今でも有効であるかどうか判断することが重要です。2010年以降に発表されたデータを利用し、WHO2010データを組み合わせることで妊孕可能男性の精液基準値を評価しています。 
(1)2010-2020年の妊孕可能男性の精液所見、(2)WHO2010を作成したときに用いた精液所見を組み合わせて検討しました。12カ国の3,500人以上のデータを分析しています。濃度、運動率、形態の5th centileは以下の精液濃度1,600万/ml、30%の前進運動率(42%の運動率)、4%の正常形態率となりました。 
妊孕可能男性と不妊男性との明確な境界を示すものではありませんが、妊孕可能男性の正常下限値を示しています。 

私見

私が生殖医療に関わり始めてから3度基準値変更がありました。あと、何回あるのかな。WHO2010ではオーストラリア、ノルウェー、アメリカ、フランス、イギリス、デンマークを対象としていましたが、今回はイタリア、イラン、エジプト、中国、ギリシャが加わりました。ちなみに精液濃度と妊娠率を最初に報告したのは1951年MacLeod and Goldなので、かれこれ70年経っていて臨床データを積み重ね・報告の大事さを日々感じます。 

項目 単位 N数 センタイル 
2.5th 5th (95%信頼区間) 10th 25th 50th 75th 90th 95th 97.5th 
精液量 ml 3,586 1.4 (1.3-1.5) 1.8 2.3 4.2 5.5 6.2 6.9 
精子濃度 百万/ml 3,587 11 16 (15-18) 22 36 66 110 166 208 254 
総精子数 百万 3,584 29 39 (35-40) 58 108 210 363 561 701 865 
運動率 3,488 35 42 (40-43) 47 55 64 73 83 90 92 
前進運動率 3,389 24 30 (29-31) 36 45 55 63 71 77 81 
非前進運動率 3,387 (1-1) 15 26 32 38 
不動精子率 2,800 15 20 (19-20) 23 30 37 45 53 58 65 
バイタリティ 1,337 45 54 (50-56) 60 69 78 88 95 97 98 
正常形態率 3,335 (3.9-4.0) 14 23 32 39 45 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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