男性不妊

2021.07.14

精液検査どこまで良いと妊娠しやすくなるの?_その2(Hum Reprod. 2021)

はじめに

より自然妊娠しやすい精液検査の適した値をご紹介いたします。

ポイント

WHO基準値を上回る新しい閾値を示した論文の紹介です。自然妊娠を目指すカップルにとって、精子濃度3,500万/mL以上、前進運動率40%以上、総精子数9,500万以上が、より妊娠しやすい目安となります。

引用文献

Sorena Keihani, et al. Hum Reprod. 2021. DOI: 10.1093/humrep/deab133.

論文内容

自然妊娠群

自然妊娠群(5,126組)では、5年以内の自然妊娠率は59.5%で、妊娠までの期間の中央値は27(26~30)カ月でした。

自然妊娠群のサブグループ解析では、WHOの基準値に基づいて、精子濃度が1,500万/mL以上の男性では妊娠の可能性が71%高く(HR:1.71、95%CI:1.48-1.98)、前進運動率が32%以上の男性では65%高く(HR:1.65、95%CI:1.47-1.84)、総精子数が3,900万以上の男性では70%高くなりました(HR:1.70、95%CI:1.47-1.95)。

5年後の妊娠をより正確に予測するために算出された閾値は、濃度が3,500万/mL、運動性が40%、総精子数が9,500万となりました。

早期妊娠を達成するための最適な総前進精子数の閾値は5,500万であり、妊娠する確率が55%高くなりました(HR:1.55、95%CI:1.41-1.70)。

女性因子のない自然妊娠群

1,669人[27%:卵管因子(n=199、12%)、子宮因子(n=154、9%)、排卵因子(n=1211、72%)、加齢因子(n=341、20%)]の女性因子を除いた自然妊娠群では、これらの診断を受けていない3,753組のカップルで5年以内の自然妊娠率は62%で、妊娠までの期間の中央値は23.5(21.5~25.4)カ月でした。

女性因子のない自然妊娠群のサブグループ解析では、精子濃度が1,500万/mL以上の男性で78%(HR:1.78、95%CI:1.52-2.08)、前進運動率が32%以上の男性で69%(HR:1.69、95%CI:1.50-1.91)、総精子数が3,900万以上の男性で80%(HR:1.80、95%CI:1.54-2.11)、自然妊娠の確率が高くなりました。

5年後の妊娠をより正確に予測するために算出された閾値は、濃度が4,000万/mL、前進運動率が35%、総精子数が9,500万となりました。

早期妊娠を達成するための最適な総前進精子数の閾値は2,000万であり、妊娠する確率が80%高くなりました(HR:1.80、95%CI:1.58-2.06)。

私見

精液所見は基準を上回れば自分は関係ないというスタンスではなく、夫婦カップルで共に妊活の最適化に取り組んでいくのが良いかと思っています。 
ただ、人は目標がなければ努力はできないので、そういう意味では男性側の頑張る目安になればいいですね。 

より適した値
 (自然妊娠群)
より適した値
 (女性因子のない自然妊娠群)
WHO2010基準値
精子濃度 3,500万/mL 4,000万/mL 1,500万/mL 
前進運動率 40% 35% 32% 
総精子数 9,500万 9,500万 3,900万 
総前進精子数 5,500万 2,000万 基準値なし 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 精液検査

# 精液所見

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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