
はじめに
プロバイオティクス製品を用いることで、不妊女性の腟内細菌叢を健康な状態に近づけ、妊娠の可能性を改善できる可能性がありますが、凍結融解胚移植周期における有効性を評価した臨床試験は多くはありません。凍結融解胚移植周期における腟内プロバイオティクスの腟内細菌叢正常化効果と妊娠予後改善効果を検討したランダム化比較試験をご紹介します。
ポイント
プロバイオティクス製剤は腟内環境を正常化し、不妊女性の妊娠予後を改善する可能性があります。特に良好な受精胚を移植する場合、その効果がより顕著になります。
引用文献
Davari Tanha F, et al. Arch Gynecol Obstet. 2023;308(6):1587-1592. doi: 10.1007/s00404-023-07147-w.
論文内容
2019年1月から8月にイランのART治療施設で治療中の103名を対象としたランダム化比較試験です。初回または2回目の凍結融解胚移植周期となる40歳未満の不妊女性を対象としました。参加者は単純無作為化により介入群と対照群に割り付けられました。介入群にはLactovag腟坐薬(Lactobacillus rhamnosus 10⁹ CFU + イヌリンを含むシンバイオティクス製剤)を月経周期開始の2週間前から胚移植まで最大2週間、毎日投与しました。対照群には同形同大のプラセボを投与しました。患者と担当医は群分けについて盲検化されました。
ホルモン調整周期にて受精胚を1〜3個移植しました。
主要評価項目は妊娠達成者数でした。凍結融解胚移植後2週間でβhCG測定(生化学的妊娠)、陽性の場合は6週目にGS確認(臨床妊娠)、7週目に胎児心拍確認(継続妊娠)を実施しました。
結果
Lactovag群49名、対照群45名が解析されました。グレードAの受精胚は71.3%(67例)の参加者に移植されました。グレードAの受精胚移植は妊娠のリスク比を1.53倍上昇させましたが(95%CI 1.25-1.87、p=0.001)、Lactovag使用によりこの比率は1.68倍に向上しました(95%CI 1.28-2.19、p=0.008)。対照群では1.39倍(95%CI 1.04-1.86、p=0.062)でした。
生化学的妊娠(βhCG陽性)はLactovag群30.6%(15例)、対照群25.0%(11例)でした(OR 1.32、95%CI 0.53-3.30、p=0.547)。臨床妊娠(GS確認)はLactovag群28.6%(14例)、対照群17.8%(8例)でした(OR 1.85、95%CI 0.69-4.94、p=0.217)。継続妊娠(胎児心拍確認)はLactovag群28.6%(14例)、対照群13.3%(6例)でした(OR 2.60、95%CI 0.90-7.50、p=0.071)。すべての妊娠予後でLactovag群が高い傾向を示しましたが、統計学的有意差には至りませんでした。対照群の妊娠喪失率はLactovag群の5倍でした。妊娠喪失した女性の半数以上が多因子性または原因不明不妊でした。
私見
不妊女性における細菌性腟症の有病率が高いことは複数の研究で報告されております(van Oostrum et al., Hum Reprod, 2013)、Salah et al.(Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol, 2013)。
採卵時や凍結融解胚移植時に予防的抗生物質の使用することがありますが、dysbiosisを引き起こす可能性もあり、プロバイオティクスを使用することは理屈にあっている気はします。
ただ、やはり成績を改善させる作用が強いわけではないので、患者様にどのようにお話をするかが大事ですね。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。