不育症

2024.11.28

中絶処置後のエストロゲンゲル内膜保護作用(Hum Reprod. 2024)

はじめに

エストロゲン受容体は子宮内膜上皮および子宮内膜間質細胞に存在するため、エストロゲンは子宮内膜再生に重要であることがわかっています。中絶を含めた子宮内腔処置後は内膜にダメージが蓄積され内膜菲薄化の原因になることから、術後エストロゲン補充し予防できないかという議論が以前からなされてきました。今回、中絶処置後の内膜保護作用について、エストロゲンゲルを用いた質が高い研究が発表されましたのでご紹介いたします。

ポイント

エストロゲンゲルは、中絶処置後の子宮内膜再生促進に有効であり、副作用はほとんどなさそうです。

引用文献

C Y Li, et al. Hum Reprod. 2024 Nov 1;39(11):2466-2472. doi: 10.1093/humrep/deae227.

論文内容

エストロゲンゲルは、中絶処置後の子宮内膜再生促進に有効かどうか調査した多施設共同、優越性、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験を実施しました。

2022年3月9日から2023年2月21日の間に、200名の女性に28日間、エストロゲンゲル(治療群)とプラセボゲル(対照群)のいずれかを投与する群に1:1の割合で割り付けました。参加者は、中絶処置後21〜23日目に超音波検査で子宮内膜の厚さ(mm)を測定する予定でした。この試験は、最終的に盲検化が解除されるまで、参加者、治験責任医師、医療スタッフ、統計解析者には盲検化が行われました。ゲルは1日2.5g、手術当日から28日間継続しました。中絶処置は電気吸引法を用いています。

参加者は、妊娠10週以内に人工妊娠中絶を受けた女性です。合計200名の参加者が登録され、各群に100名が登録されました。治療群88人(88%)、対照群82人(82%)がプロトコール通りに試験を実施し、PPS(per-protocol set)に含まれました。intent-to-treat(ITT)解析では、試験群に無作為に割り付けられたすべての参加者を対象とし、追跡不能を考慮するために逆確率加重を用いました。

結果

ITT解析の結果、治療群(平均8.1±2.5mm)では対照群(平均6.9±2.1mm)と比較して、中絶後21〜23日目に子宮内膜の厚さが増加しました(平均差1.2mm、95%CI 0.7〜1.9; P<0.001)。月経復帰までの期間の中央値は、治療群(34日、IQR 30〜38)の方が対照群(35日、IQR 32〜42)よりも短く、その差は-1日(95%CI -2.3〜-0.9; P=0.036)でした。中絶後最初の周期における出血の時期や量に差は認められませんでした。PPS解析はITT解析の結果を反映していました。有害事象はわずかであり(6% vs. 8%)、血算、肝臓、腎臓、凝固検査結果は群間で同等でした(すべてP>0.05)。

私見

もともと内膜が薄い患者には有効なのでは?と読みましたが、内膜が薄い患者で多く発生する絨毛遺残の発生率がどのように変化するか、の記載がされていません。
癒着剥離後の再癒着抑制にはエストロゲン補充は無効だったことから、どのような症例にご提案するのがよいのか判断が難しいところです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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