研究の紹介
非閉塞性無精子症の内科的および外科的マネジメントにおける世界的な診療とパターンとばらつき: 世界的な調査結果、ガイドラインおよび専門家の勧告
Global Practice Patterns and Variations in the Medical and Surgical Management of Non-Obstructive Azoospermia: Results of a World-Wide Survey, Guidelines and Expert Recommendations.
Rambhatla A, 他. World J Mens Health. 2024 Apr 4. doi: 10.5534/wjmh.230339. PMID: 38606867. 今回も、非閉塞性無精子症はどうやって診断されている?(2024年8月31日)の続きで、診断後のマネジメント(治療)についてです。診断よりも専門家の間でばらつきがあります。 具体的な質問項目とその回答結果をピックアップして質問ごとにご紹介いたします。
用語
NOA 非閉塞性無精子症 mTESE 顕微鏡下精巣内精子採取術 cTESE conventional TESE (精巣内精子採取術で単純なもの) FNA fine needle aspiration TESA Testicular sperm aspiration * 70%以上の回答をえた項目
以下が質問とその回答結果になります。
どのようなNOA症例で、精子採取術の前にホルモン療法を行いますか?(%) *低ゴナドトロピン性性腺機能低下症 74.6% 高ゴナドトロピン性性腺機能低下症 23.6% ゴナドトロピン正常の性腺機能低下症 29.6% 全てのNOA症例 9.9% 初回の精子採取で精子採取できず、2回目の精子採取の前に 24.6% ゴナドトロピン正常の症例にはホルモン療法は効果がないと考える 12.2% ホルモン療法は実施していない 7.2%
精子採取の前のどのくらいの期間、ホルモン療法を行いますか?(低ゴナドトロピン性性腺機能低下症を除く) 通常ホルモン療法をお勧めしない 11.4% 1-2ヶ月 11.4% 3ヶ月 12.3% 6ヶ月 6.9% 1年 40.7% ホルモン療法への反応による 16.5% 該当なし 0.8%
高ゴナドトロピン性のNOA症例に対して精子採取術の前にどのようなホルモン療法を施行しますか? 該当なし 12.6% HCG+クロミフェンクエン酸塩 6.3% HCGとクロミフェンクエン酸塩の組み合わせ 8.4% 組み換えHCG製剤 3.8% HCG alfa 17.1% FSH/HMG 150 IU 週3回 8.1% 組み換えFSH製剤 75 IU 週3回 11.1% 高度に精製されたHMG 7.8% アロマターゼ阻害薬 1mg/日 21.6% クエン酸クロミフェン1日50mg 14.1% クエン酸クロミフェン1日25mg 16.8% ホルモン療法は行っていない 35.0%
ゴナドトロピン正常のNOAの精子採取術の前に、どのホルモン療法を施行しますか? 該当なし 13.6% HCG+クロミフェンクエン酸塩 8.1% HCGとクロミフェンクエン酸塩の組み合わせ 4.2% 組み換えHCG製剤 2.4% HCG alfa 12.3% FSH/HMG 150 IU 週3回 9.6% 組み換えFSH製剤 75 IU 週3回 9.0% 高度に精製されたHMG 6.9% アロマターゼ阻害薬 1mg/日 16.0% クエン酸クロミフェン1日50mg 14.2% クエン酸クロミフェン1日25mg 22.3% ホルモン療法は行っていない 33.1% 他 1.2%
mTESEは一般的にどの程度受け入れられますか? ほとんどのカップルは自分の精子を利用したいため、mTESEを選択する 68.1% ほとんどのカップルは、mTESEよりもドナー精子を好む 2.7% ほとんどのカップルは、同じ周期で両方のオプションを選択する(mTESEとドナー精子のスタンバイ)。 9.0% 宗教や夫婦の経済状態によって異なる 10.2% 該当なし 9.9%
NOA症例に対してmTESEをどのくらいの頻度で行っていますか? NOA症例の10%未満 14.5% NOA症例の10%-25% 16.9% NOA症例の25%-50% 9.6% NOA症例の50%-75% 9.9% NOA症例の75%-100% 14.8% 該当なし 34.3%
クラインフェルター症候群の患者の精子採取率はどのくらいですか? 10%未満 46.0% 10%-25% 30.4% 26%-50% 19.6% 50%を超える 4.0%
胚培養士チームは、mTESEの際に採取した検体中に精子がいないと判断するまでに、精子探索にどれくらいの時間をかけますか? 30分未満 29.8% 30-60分 22.6% 61-120分 18.4% 120分を超える 14.5% 該当なし 14.8%
外科的精子採取の際、精巣生検組織を病理組織検査に提出しますか? 通常片側 17.9% 通常両側 39.1% 症例を選んで提出 25.4% 提出しない 10.7% 該当なし 6.9%
NOA症例に大きな精索静脈瘤がある場合、顕微鏡下精索静脈瘤手術を勧めますか? ほとんどの症例に勧める 57.7% 時々勧める 23.1% 勧めることは稀 9.6% 勧めない 3.9% 該当なし 5.7%
NOAに伴う精索静脈瘤の手術は、どのような場合に勧められますか? 該当なし 4.5% 精索静脈瘤の修復は勧めない 6.6% 若い女性パートナー 34.2% 私は精巣生検を行い、精索静脈瘤手術を施行する 10.8% FSH>10IU/L 9.3% FSH<10IU/L 29.1% 同側の精巣が比較的小さい場合 35.1% *大きな精索静脈瘤 80.5%
精索静脈瘤手術後のNOA男性の射出精液中の精子出現率はどのくらいですか? なし、ほとんど出現しない 16.2% 10%未満 38.1% 10-25% 25.8% 26-50% 6.3% 50%を超える 3.9% 該当なし 9.6%
精子採取術を行う前に、診断的FNAマッピングを行っていますか? ルーチンで行っている 12.3% 一部の症例で行っている 32.1% 有効であるとは思っていない 20.4% 有効であるとは思いませんし、その後の精子採取に悪影響を及す 30.4% 該当なし 4.8%
NOAの男性において、TESAとcTESEとmTESEをどのように比較検討しますか? 該当なし 19.1% まずTESAを最初に行い、TESAで精子が見つからなかった場合、2回目にcTESEまたはmTESEを行う 10.9% まずcTESEを行い、cTESEで精子が見つからなかった場合、mTESEを2回めのセッションで行う 7.0% まず cTESE を最初に行い、cTESE で精子が見つからなかった場合、 mTESE を同じセッションで行う 11.5% まずcTESEを行い、cTESEで精子が見つからなければ、mTESEを同じセッションまたは2回目のセッションで行うこともある 19.1% 直接mTESEに進む 32.4%
cTESEに比べてmTESEが優れているのはどのような場合ですか? どの場合でもない 11.0% NOAの全ての症例においてmTESEが優れている 49.5% クラインフェルター症候群の場合 38.8% 精巣機能障害や外傷の既往がある場合 19.0% FSHがかなり高値の場合 38.5% 精巣体積が小さい場合 48.3%
両側同等の精巣体積のNOAで、mTESEで片側に精子が見つからなかった場合、どうしますか? 反対側に進まない。精子が見つかるとは思っていない。 4.2% 精子が見つかる期待値が5%未満で反対側に進む 22.0% 精子が見つかる可能性が5~10%あることを想定して反対側に進む 28.6% 精子が見つかる可能性が10~20%あることを想定して反対側に進む 19.0% 精子が見つかる可能性が20%を超えることを想定して反対側に進む 8.1% 該当なし 18.1%
47,XXYの男性でmTESEにより精子を採取した場合、体外受精/顕微授精を受けるカップルに胚の着床前遺伝子検査を勧めますか? 日常的に勧める 41.3% 通常勧めない 21.7% 場合により勧める 17.5% 該当なし 19.6%
NOA患者において、精子採取術の前に精巣MRIを使用する意義はあると思いますか?
筆者の意見
質問項目それぞれについて、70%以上の専門家の意見が一致するような項目は以下の三つのみでした。
NOA症例で、精子採取術の前にホルモン療法を行う場合は? 回答 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症 74.6%
NOAの男性でテストステロン値が低く、まだ精子を採取していない場合、外因性テストステロン療法を処方しますか? 回答 いいえ 72.2%
遺伝学的異常で外科的精子採取を行う場合は? 回答 AZFc欠失 70.5%
原因不明のNOA症例で、sub-clinicalな精索静脈瘤があった場合、精索静脈瘤手術を行いますか? 回答 いいえ 81.5%
mTESEの際に、Raman spectroscopyやOptical coherence tomography、Multiphoton microscopyなどの新規の医療技術を使いますか? 回答いいえ 88.1%
NOA患者において、精子採取術の前に精巣MRIを使用する意義はあると思いますか?回答 はい 89.6%
これらのうちMRIについては今後検討しても良いかと思いました。そのほかはご紹介した通りかなりばらつきがあるのがお分かりいただけたかと思います。 NOAだった場合、患者さんと担当医でよく症例ごとに相談して治療方針を決定する必要があると考えられました。
文責:小宮顕(亀田総合病院 泌尿器科部長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。