男性不妊

2025.06.07

1日1回のタダラフィルで精液所見改善

研究紹介

1日1回のタダラフィル投与は、健常男性の精液所見を改善する。
Once-a-day Tadalafil administration improves the spermogram parameters in fertile patients.

Corvasce A, 他. Arch Ital Urol Androl. 2015 Sep 30;87(3):210-3. doi: 10.4081/aiua.2015.3.210. PMID: 26428642.

これまで、タダラフィルの精液所見への影響についての研究結果をご紹介してきました(精液所見悪化が報告された医薬品のまとめ男性不妊にはシルデナフィルとタダラフィルどちらがよい?)。
今回は、タダラフィルが精液所見に良い影響を与えるという研究です。古いものですが、ご参考になればと思います。

要旨

目的

本研究では、心因性勃起障害(ED)を有する男性に対して、タダラフィルの1日1回12週間投与の安全性および精液所見への影響を検討しました。

対象と方法

本研究には、心因性EDを有する19~35歳の男性27名を登録しました。精液所見が以下の基準を満たし、基本的に生殖機能に問題がない男性が登録されています: WHO 2010年の基準に基づき、精子濃度>1,500万/mL、前進運動率(a+b型)≧35%、射出精液量>1.5 mL、精子正常形態率≧4%以上をすべて満たした症例。いずれも妊娠の状況については未確認でした。精液検査は、タダラフィル投与前に2回、5mgのタダラフィルを1日1回3か月間連続で投与した後に2回実施しました。評価項目としては、精液量、精子濃度、「a+b型」運動精子の濃度、「a型」運動精子の濃度、正常形態精子の濃度を採用しました。投与前(T0)と3か月後(T3m)の結果を比較しました。

結果

タダラフィル5mgの1日1回投与により、総精子数、「a型」運動精子数、および精子正常形態率が平均して増加しました。また、精液量についても平均0.41mLの増加を認めました。これらの精液所見の改善は、運動率、精子正常形態率、および精液量において統計的に有意でした。予期しない安全性上の問題は認められませんでした。

結論

タダラフィルの投与により、精液所見が改善しました。特に運動率、精子正常形態率、精液量において有意な改善が見られました。
タダラフィル5mgの1日1回投与は、安全性が高く、精子形成にも良い影響を与えることが示されました。

表.タダラフィル投与前後の精液所見の比較

項目 投与前平均 投与後平均 統計的有意差
精子濃度(百万/ml) 44.0 48.7 +4.7 有意差なし
a+b運動率(%) 53.94 57.59 +3.6% p < 0.05
a運動率(%) 32.44 35.00 +2.6% 有意差なし
正常形態精子率(%) 48.91 54.74 +5.8% p < 0.05
精液量(ml) 1.97 2.38 +0.41 p < 0.001

a, rapid progressive motility; b, slow progressive motility。

筆者の意見

本ブログではこれまでに、タダラフィルが精液検査所見に悪影響を及ぼす可能性について、2つの研究を紹介してきました。タダラフィルは、勃起障害を伴う男性不妊症の治療薬として広く推奨されています。
今回紹介する研究では、タダラフィル5mgを毎日内服することで、精液所見の改善が認められたという結果が示されました。我が国では、同様の服用方法が前立腺肥大症の治療として認可されていますが、男性不妊症に対しては、保険診療では月に4回分までしかシルデナフィル(バイアグラ)やタダラフィル(シアリス)を処方することができません。そのため、保険診療の枠内では今回の研究と同様の治療を行うことは難しいのが現状です。
なお、本研究に参加した被験者はいずれも、もともとWHO基準を満たす良好な精液所見を有していたことから、タダラフィルが健常人の精液所見をさらに改善する可能性が示唆されました。一方で、精液所見が不良な症例に対して同様の効果が得られるかについては、本研究からは明らかではありません。
患者の背景や研究デザインの違いによって結果が異なるのは当然のことですが、今後も引き続き検討が必要なテーマと言えるでしょう。

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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亀田総合病院 泌尿器科部長

小宮 顕

亀田総合病院 泌尿器科部長(男性不妊担当) 生殖医療専門医・生殖医療指導医。男性不妊診療を専門的に従事する。本コラムでは男性妊活の参考になる話題を紹介している。

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