2026年7月5日から8日まで、英国ロンドンで、第42回ESHRE 2026が開催されました。ESHRE年次総会は、生殖医療に携わる医師、胚培養士、研究者、看護職などが世界各国から集まる、世界最大規模の学術集会の一つです。
今回の一般演題応募数は2,750題で、近年、ESHREへの演題応募は増加傾向にあります。その中で公募演題の採択総数はおよそ 1,100〜1,150件(ポスター約900+オーラル約250)であり、日本からの発表は約54題ありました。
参加者は134か国に及び、欧州以外では、インド496人、米国325人、ブラジル297人、メキシコ232人、タイとオーストラリアが各208人でした。日本は欧州以外の参加者数上位10か国には含まれておらず、アジアからはインド、タイ、中国がランクインしていました。
当院からは今回4題を発表しました。日常診療から生まれた疑問を研究としてまとめ、世界の研究者と共有できたことは大きな成果です。学会で得られた知見を慎重に吟味し、今後の診療の質向上につなげていきたいと考えています。
このうち2演題は以下のテーマです。
① 亀田IVFクリニック幕張 川井
演題のまとめ
腟由来細菌は約9割の女性で子宮に到達し、内膜Lactobacillus環境はIVF成績に影響します。Haahr 2025のRCTは「腟dysbiosisの治療はIVF成績を改善しない」と示しましたが、腟検査が内膜環境の非侵襲的サロゲートとして価値を持つかは未検証のままです。本研究は不妊女性242名(2施設)を対象に、腟Nugent Lactobacillus morphotype score(LMS 0〜4)が子宮内Lactobacillus量・菌種構成・病原菌検出をqPCRで予測できるかを検討した後方視観察研究です。
結果
子宮内総Lactobacillus量はLMSと強い負の相関を示し(ρ=−0.488、p<10⁻¹⁵)、中央値は4,746→0コピーへ段階的に減少しました。菌種別ではL. crispatusが最も強く相関し、LMS 4では41例全例(100%)で検出されず(特異度1.000)。病原菌検出率もLMS上昇に伴い増加(OR 2.70、3–4 vs 0–1、p=0.001)しましたが、LMS 0–1でも24.1%で検出され、低スコアが病原菌不在を保証しないことも示されました。これらを踏まえ、LMSを3段階(0–1安心、2–3不確定、4高リスク)に層別しEMMA/ALICE・CD138等の内膜精査へ振り分ける臨床パスウェイを提案しました。
② 亀田IVFクリニック幕張 平岡管理胚培養士
演題のまとめ
Piezo-ICSIは受精効率を高めつつ卵細胞膜損傷を最小化する手技ですが、周産期安全性に関するエビデンスは乏しいのが実情です。本研究は2016年6月〜2023年8月に凍結融解単一胚盤胞移植を行った症例を対象に、Piezo-ICSI(n=1,822)とIVF(n=1,701)を比較した2施設後方視コホート(40歳未満、PGT非施行)です。従来型ICSIは両施設で実施しておらず、刺激・培養・凍結・移植プロトコルを共有するIVFを基準群としました。
結果
傾向スコアマッチング(1:1)を含む調整の結果、臨床妊娠率(49.9% vs 48.4%)、出生率(38.7% vs 37.9%)、流産率、周産期合併症・早産・出生体重・在胎週数・先天異常のいずれも両群同等でした。一方、Piezo-ICSI群で女児比率が高くなりました(53.2% vs 43.4%、P<0.001)。男性因子の有無で層別しても妊娠・出生率は同等でした。
私見
私は今回参加して、ただただ世界の動いているリサーチの質の高さ、採択されているoral演題の素晴らしさに、もっと頑張らないといけないなと反省し続ける一週間でした。
信頼ある医療を提供し続けられる、そして普段の診療から生まれるリサーチクエスチョンに向き合い続ける施設に成長していけるよう努力し続けたいと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。