培養

2021.09.29

コロナウイルスが精子の凍結保存に及ぼす影響(論文紹介)

コロナによる感染が拡大してから、妊娠に対する悪影響が危惧されてきました。医師部門からも記事がいくつか出ていますが、妊婦さんはワクチン接種を受けても問題ないこと、また、ワクチン接種は男性の精液所見に影響しないこと等が報告されています。 

今回はコロナウイルスと体外受精における精子の凍結保存に及ぼす影響について述べた論文を紹介します。 

Anifandis, George, Tyl H. Taylor, Christina I. Messini, Katerina Chatzimeletiou, Alexandros Daponte, Dimitrios Ioannou, and Helen G. Tempest 2021. “The Impact of SARS-CoV-2 on Sperm Cryostorage, Theoretical or Real Risk?” Medicina 57, no. 9: 946. https://doi.org/10.3390/medicina57090946 

凍結保存とウイルスで問題になるのは、凍結保存タンク内での伝染です。凍結保存には一般的に液体窒素が用いられます。具体的に言いますと、感染症をお持ちの患者さんの検体と同じタンクに保管された感染症のない患者さんの検体にウイルスが液体窒素を介して伝染しないかという問題になります。 

現在のところ、体外受精用に保管された検体において、液体窒素を介した感染は報告されていません。今回発表された論文においても、現在のところ、液体窒素を介してコロナウイルスが伝染された報告はされていないことが報告されています。 

患者さんからお預かりする検体は検査時に感染症『陰性』であっても潜伏期間中に検査をしている可能性もあります。したがって、患者さんの検体および我々医療従事者の安全性を守るためにも、このことを一時も忘れずに丁寧に検体の取り扱いをすることが何よりも大切です。 

今回紹介した論文はそういった大事なことを今一度思い起こさせてくれるものでした。 

引き続き、丁寧な操作を心掛け、コロナと体外受精に関する新しい論文が発表されましたら紹介したいと思います。 

文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 生殖補助医療管理胚培養士)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 精液所見

亀田IVFクリニック幕張 生殖医療事業管理部 培養管理室 管理胚培養士

平岡 謙一郎

亀田IVFクリニック幕張 生殖補助医療管理胚培養士。広島県立大学大学院修了(博士)。体外受精の中心となる受精・培養・凍結について専門知見に基づき紹介している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

受精胚の凍結を成功させるために_融解時

2025.11.08

受精胚の凍結を成功させるために_凍結時

2025.10.11

卵子の保管場所について(その一)

2024.10.04

卵子凍結を動画で紹介

2024.09.16

動画で見る胚盤胞の凍結(胚盤胞を縮める)

2024.06.08

培養の人気記事

卵子の大きさ

2025.03.08

精子の大きさ

2025.04.19

媒精(IVF)の仕組み

2026.08.08

体外受精に使われる培養液はどんな種類があるの?

2021.01.13

精子DNA損傷検査法ハロースパームの紹介

2021.09.14

初期胚に対する透明帯孵化補助

2021.07.08

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11