不育症

2023.02.07

後期流産・死産をくりかえし免疫療法が奏功した症例報告(当院症例: J Clin Med. 2023)

はじめに

習慣流産(RPL)は女性の1〜2%、カップルの2〜5%が経験し、その原因には遺伝的異常、母体の自己抗体、内分泌機能障害、子宮異常などが含まれます。これまで50%以上のRPL症例は原因不明とされてきましたが、受精胚の染色体異常を除いても約25%の患者では原因が特定できないと考えられています。近年、RPLと免疫病理との密接な関連が複数の研究で指摘されており、この関連性を示すエビデンスの増加に伴い、RPL患者に対する免疫調節療法が評価されています。今回、免疫学的異常が疑われる原因不明習慣流産に対して静注免疫グロブリン(IVIG)療法とヘパリンを併用し、満期産に成功した症例報告をご紹介いたします。

ポイント

免疫学的異常を有する原因不明習慣流産患者に対するIVIG療法は、患者の免疫学的異常に臨床的に有益な影響を及ぼし得る治療選択肢となります。

引用文献

Mitsui J, et al. J Clin Med. 2023 Feb 4;12(4):1250. doi: 10.3390/jcm12041250.

論文内容

習慣流産の約60%は原因不明の病因を有しています。原因不明習慣流産に対する免疫療法は依然として確立されていません。36歳女性、非肥満で、妊娠22週での死産と妊娠8週での自然流産の既往がありました。以前の施設で習慣流産の検査を受けましたが、有意な所見は認められませんでした。当院受診時、血液検査でTh1/Th2比の不均衡が示されました。超音波検査、子宮鏡検査、精液検査では異常を認めませんでした。
ホルモン調整周期での胚移植により妊娠しましたが、妊娠19週で流産となりました。児に奇形はありませんでしたが、両親の意向により染色体検査は実施されませんでした。胎盤の病理学的所見では血流灌流障害が示唆されました。患者と夫の染色体検査では正常核型でした。その他の検査で、Th1/Th2比の不均衡の再現性と子宮放射状動脈血流の高い抵抗係数が認められました。
2回目の胚移植後、低用量アスピリン、静注免疫グロブリン、未分画ヘパリンが投与されました。妊娠経過は良好で、低用量アスピリンは28週まで、IVIGは35週まで、未分画ヘパリンは36週まで使用されました。妊娠40週で帝王切開により健康な女児(2865g)が出生し、母児ともに出生後7日で退院しました。

私見

過剰にアドオン治療を加えていくことに対する懸念は日々の診療でも持ち続けておく必要がありますが、まだまだ不育症分野は解明されていないことが多く、症例ごとに様々な治療選択をセカンドオピニオンの提案を含めて検討していくことが必要かと考えています。

~関連コラム~

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# アスピリン、ヘパリン

# 流産、死産

# 不育症(RPL)

# 免疫不妊・不育

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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