体外受精

2025.05.22

黄体補充前卵胞サイズは修正排卵周期凍結融解胚移植成績に影響を与えない(F S Rep. 2024)

はじめに

(修正)排卵周期凍結融解胚移植は薬剤介入が最小化できること、妊娠高血圧症候群が少なくなるなどの傾向から世界的に増加傾向にあります。しかし、排卵周期プロトコルでは、LHサージまたはhCGトリガー前に、複数回のモニタリングが必要になり患者のコストと時間的負担が増加します。ある一定の卵胞サイズになっていた場合の修正排卵周期凍結融解胚移植の臨床成績が影響をうけるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

排卵がある女性における修正排卵周期単一凍結融解胚移植では、黄体期補充前の卵胞サイズは着床率、臨床妊娠率、流産率、継続妊娠率などの臨床成績に影響しません。

引用文献

Shahryar K Kavoussi, et al. F S Rep. 2024 Dec 15;6(1):47-51. doi: 10.1016/j.xfre.2024.12.001.

論文内容

プロゲステロン補充前の卵胞サイズが修正排卵周期単一凍結融解胚移植の臨床成績に影響するかどうかを判断することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2018年1月1日から2024年4月1日に18~45歳の正常排卵女性、自己卵子、未検査または着床前遺伝子検査(PGT-A)で正常胚盤胞を用いた単一凍結融解胚移植を対象としました。グループAはトリガー日またはLHサージピーク陽性時に主席卵胞が16mm未満(n=50)、グループBはトリガー日またはLHサージピーク陽性時に主席卵胞が16mm以上(n=65)と定義されました。主要評価項目は継続妊娠率であり、副次評価項目は着床率、臨床的妊娠率、自然流産率としました。

結果

二変量解析では、継続妊娠率(グループA:48.0%、24/50、グループB:44.6%、29/65)、着床率(グループA:64.0%、32/50、グループB:61.5%、40/65)、臨床的妊娠率(グループA:58.0%、29/50、グループB:52.3%、34/65)、および流産率(グループA:25.0%、8/32、グループB:27.5%、11/40)に有意差はありませんでした。主席卵胞サイズと関心のある転帰との間の潜在的交絡を調査するための多変量解析でも、主要および副次的評価項目に差はありませんでした。さらに、主席卵胞サイズを連続変数として用いた多変量解析でも転帰に差は認められませんでした。

私見

正常排卵女性における修正排卵周期単一凍結融解胚移植にて、黄体期補充前の主席卵胞サイズが臨床成績に影響しないことを示しています。
なお、黄体補充方法ですが、月経周期10-12日目に初回モニタリングとして経腟超音波検査、エストラジオールとプロゲステロンを実施。子宮内膜厚が7mm以上かつプロゲステロンレベルが3ng/mL未満であれば、卵胞サイズに関わらず、その夜にrhCG(Ovidrel)を投与する計画が立てられました。黄体補充はプロゲステロン油性注射(50mg、1日1回)もしくはEndometrin(100mg、1日3回)で、LHサージピーク後の朝、または夜間のhCG注射から約36時間後に開始しています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

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# 胚移植(ET)

# 黄体補充

# 排卵周期下胚移植

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