はじめに
若年男性の年代別の精液の質の変遷を示した報告をご紹介します。
多くの研究が精液の質の低下を、総精子数と精子濃度に焦点を当てて報告しており、前進運動精子数、総運動精子数、正常形態精子数で報告しているものは多くありません。
ポイント
総精子数、精子濃度、前進運動率を含め、若年男性における精液の質が年々低下する傾向がみられましたが、総運動精子数は低下傾向にはありませんでした。
引用文献
Xuefeng Luo, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Aug;40(8):1807-1816. doi: 10.1007/s10815-023-02859-z.
論文内容
1980年1月から2022年8月までの3つの英語データベースと4つの中国語データベースを検索し、精液の質の傾向を調査したシステマティックレビュー・メタアナリシスです。
結果
1978年から2021年に28カ国264,665名の男性を対象とした162報告が該当しました。総精子数(-306万/年、95%CI -3.28~-2.84)、精子濃度(-0.47万/ml/年、95%CI -0.51~-0.43)、前進運動率(-0.15%/年、95%CI -0.20~-0.09)で有意な減少が観察され、総運動精子数(0.28%/年、95%CI 0.24~0.32)では増加傾向が見られました。メタ回帰分析の結果、年齢、大陸、収入、射精期間が総精子数、精子濃度、前進運動率、総運動精子数に影響していました。
サブグループ解析の結果
精液の質におけるサブグループ解析
- 総精子数
オセアニア(回帰係数=2.76、95%CI 1.34〜4.17)
無射精期間2〜3日(回帰係数=2.04、95%CI 1.97〜2.12)
無射精期間2~4日(回帰係数=3.73、95%CI 3.69~3.77) - 精子濃度
無射精期間2~3日(回帰係数=0.38、95%CI 0.29~0.46) - 前進運動率
ヨーロッパ(回帰係数=0.15、95%CI -0.01~0.30、P=0.06)
北米(回帰係数=0.31、95%CI 0.12~0.50)
高所得(回帰係数=0.59、95%CI 0.33~0.85) - 総運動精子数
オセアニア(回帰係数=0.48、95%CI 0.48~0.48)
高所得(回帰係数=0.43、95%CI 0.34~0.52)
無射精期間2~4日(回帰係数=0.63、95%CI 0.48~0.77)
私見
先進国や高所得国で年代的に精液の質が低下しているようですので、生活習慣などが影響を与えている可能性がありそうですね。無射精期間は長期データをみても2~4日がよさそうだと感じます。
過去にも同様のレビューが多数されているのだなとあらためて感じました。
Lv MQ, et al. Hum Reprod. 2021
Carlsen E, et al. BMJ. 1992
Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2017
Levine H, et al. Hum Reprod Update. 2022
Cipriani S, et al. Andrology. 2023
Swan SH, et al. Environ Health Perspect. 2000
文責:川井清考(WFC group CEO)
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