体外受精

2023.11.10

ホルモン調整周期凍結融解胚移植後の妊娠初期出血割合(Hum Reprod. 2023)

はじめに

妊娠初期の性器出血・絨毛膜下血腫はナーバスになる臨床症状のひとつです。
過去にもブログでとりあげていますが、システマティックレビューと前向きコホート研究が報告されましたのでご紹介いたします。

~過去のコラム~

ポイント

ホルモン調整周期凍結融解胚移植後の妊娠初期(8週まで)出血割合は47%でしたが、出血が生殖成績に影響することはなさそうです。

引用文献

J M Nielsen, et al. Hum Reprod. 2023 Oct 27:dead218. doi: 10.1093/humrep/dead218.

論文内容

生殖補助医療後の妊娠初期の出血に関する既存文献のシステマティックレビューを行い、この集団における出血割合と生殖医療転帰に対してランダム効果比例メタアナリシスを実施しました。また、2020年1月から2022年11月にホルモン調整周期凍結融解胚移植で妊娠に至った320名に対して前向きコホート研究を行い、出血割合と生殖成績を検討しました。予後を評価するためにコホート研究の二次解析を行いました。
コホート研究では、ホルモン調整周期凍結融解胚移植(胚盤胞)での妊娠女性を対象とし、妊娠検査陽性後の出血や点状出血とその期間に関するアンケートに回答しました。

結果

12件のレビュー結果では、妊娠初期の出血割合は2.1%~36.2%でした。ランダム効果比例メタアナリシスの結果、生殖補助医療下における妊娠初期の出血割合のプール効果推定値は18.1%(95%CI(10.5;27.1))でした。そのうち4件は流産データまで追跡できており、すべての報告で出血歴のない女性と比較して、妊娠初期に出血した女性では流産リスクが高いことが分かりました。
今回のホルモン調整周期凍結融解胚移植(胚盤胞)での妊娠女性の出血割合は47%(149/320)でした。出血は中央値2日(範囲0.5-16日)の点状出血でした。1回または数回の出血を経験した149名女性のうち106名(71%)が妊娠12週時点で妊娠が継続していました。一方、出血エピソードがなかったと報告した女性171名のうち、115名(67%)が妊娠12週時点で妊娠継続していました。出血の有無で継続妊娠率・出生率は差を認めませんでした。

私見

システマティックレビューで引用された報告は以下のとおりです。 

論文症例数報告日研究デザイン移植胚胎児数出血割合
Korosec et al. 1126 2014 Retrospective cohort study 新鮮胚 単胎 8.10% 
凍結胚 6.60% 
Dantas et al. 228 1996 Cohort study 体外受精 記載なし 12% 
Pezeshki et al. 500 2000 Retrospective cohort study 体外受精 記載なし 31.20% 
Sutter et al. 1432 2006 Cohort study 新鮮胚 単胎 31.50% 
Goldman et al. 212 1988 Retrospective cohort study 新鮮胚 記載なし 29.60% 
Hofman et al. 169 2000 Prospective cohort study 体外受精 記載なし 36.20% 
Ezechi et al. 59 2008 Matched cohort study 体外受精 記載なし 23.10% 
Källén et al. 1326 2005 Register study 体外受精 多胎とわず 2.10% 
Koudstaal et al. 307 2000 Matched cohort study 新鮮胚 単胎 21.20% 
Koivurova et al. 221 2002 Retrospective cohort study 新鮮胚 多胎とわず 10.70% 
Verlaenen et al. 140 1995 Matched cohort study 体外受精 単胎 7.90% 
Farhi et al. 561 2013 Prospective cohort study IVF 単胎 23.30% 
ICSI 20.20% 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 流産、死産

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# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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