体外受精

2026.02.09

採卵時と凍結融解胚移植時の季節による生殖予後(Hum Reprod. 2023)

はじめに

これまで体外受精における季節の影響については、新鮮胚移植を中心に研究されてきましたが、凍結融解胚移植における季節の影響、特に採卵時の季節が妊娠予後に及ぼす影響についてはほとんど検討されていませんでした。胚移植時の季節ではなく、採卵時の季節が凍結融解胚移植の成績を左右する可能性があります。今回、南半球オーストラリアにおいて、採卵時・凍結融解胚移植時の季節、気温、日照時間が出生率に与える影響を調査したレトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。

ポイント

採卵が夏に行われた凍結融解胚移植では、秋に採卵された場合と比較して出生率が30%増加し、この効果は胚移植時の季節とは無関係でした。日照時間が長い日の採卵も出生率向上と関連していました。

引用文献

Leathersich SJ, et al. Hum Reprod. 2023 Sep 1;38(9):1714-1722. doi: 10.1093/humrep/dead137.

論文内容

採卵時の季節、気温、日照時間が凍結融解胚移植の出生率に与える影響を調査したレトロスペクティブコホート研究です。2013年1月から2021年12月に単一施設で実施された全ての凍結融解胚移植を対象としました。1835名2155周期のIVF/ICSI-ETサイクルから得られた受精胚を用いた3659回の凍結融解胚移植が含まれました。採卵日および凍結融解胚移植日の気象条件として、平均気温、最低気温、最高気温、および記録された日照時間を収集しました。また、採卵または胚移植の14日前および28日前の期間についても同様のデータを収集しました。生殖予後評価項目について、季節、気温、日照時間との関連を、同一患者における複数周期、採卵時年齢、年齢の二次項で補正して解析しました。

結果

秋に採卵された凍結融解胚移植と比較して、夏に採卵された凍結融解胚移植では出生率ORが1.30(95%CI:1.04-1.62)と30%増加しました。この結果は胚移植時の季節で補正した後も一貫していました。採卵日の日照時間が最高三分位(10.7-13.3時間)であった場合、最低三分位(0-7.6時間)と比較して出生率のORが1.28(95%CI:1.06-1.53)と28%増加しました。採卵日の気温は出生率に独立した影響を及ぼしませんでした。採卵時の季節で補正すると、胚移植が春に行われた場合の出生率低下は消失しました。これは春に移植された受精胚の多くが、凍結期間の中央値0.4年を考慮すると、出生率が最も低い秋に採卵されていたためと考えられます。胚移植日の最低気温が高い場合(14.5-27.8℃)、低い場合(0.1-9.8℃)と比較して出生率ORが0.82(95%CI:0.69-0.99)と18%減少し、この結果は採卵時の条件で補正した後も一貫していました。採卵日の平均気温が中程度の三分位であった場合、最低三分位と比較して流産率が低下しました(平均気温:OR:0.70、95%CI:0.49-0.99、最高気温:OR:0.66、95%CI:0.47-0.93)。胚移植日の最高気温が最高三分位(27.5-43.3℃)であった場合、最低三分位(13.2-21.2℃)と比較して流産率ORが1.42(95%CI:1.02-1.98)と42%増加しました。ICSI群では、採卵が夏または春に行われた場合に出生率が増加し、この効果は胚移植時の季節で補正した後も維持されました。一方、従来のIVF群(ICSIなし)では、採卵時の季節は出生率に影響しませんでした。採卵前14日間の平均日照時間が最高三分位(10.7-13.3時間)であった場合、最低三分位(0-7.6時間)と比較して受精率が増加しました(IRR:1.04、95%CI:1.00-1.07)。

私見

凍結融解胚移植の成功率を決定するのは「いつ移植するか」ではなく「いつ採卵するか」であることを明確に示した重要な報告です。秋の採卵で出生率が最も低く、夏の採卵で最も高いという結果はおもしろいですね。これまで北半球ボストンからの報告(Correia KFB, et al. Fertil Steril, 2022)では採卵日の気温が重要とされていましたが、今回の報告では日照時間がより重要な因子であることが示されました。
凍結融解胚移植に関する季節の影響については、これまで複数の研究(Dunphy BC, et al. Hum Reprod, 1995、Kirshenbaum M, et al. PLoS One, 2018、Xiao Y, et al. Arch Gynecol Obstet, 2018、Liu X, et al. Sci Rep, 2019)が胚移植時の季節と臨床的妊娠率または出生率との間に関連性がないことを報告しており、本研究の結果もこれと一致しています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 出生児予後

# 凍結融解胚移植

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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