はじめに
着床前検査は2005年Kokkaliらがtrophectoderm (TE)生検による着床前検査にてヒト生児出産を報告して以来、現在の主要な方法となっています。TE生検とは、胚盤胞のTE層から5~10個の細胞を採取することで行う検査手法で、割球生検に比べて侵襲性が少ないとされています。TE生検による着床前検査を行った胚移植後妊娠の周産期転帰のメタアナリシスをご紹介いたします。
ポイント
TE生検による着床前検査を行った胚移植後妊娠の周産期転帰は、概ね通常体外受精/顕微授精と比較し差がないことがわかりました。早産リスクのみ注視する必要がありそうです。
引用文献
Di Mao, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Feb;230(2):199-212.e5. doi: 10.1016/j.ajog.2023.08.010.
論文内容
trophectoderm (TE)生検を行うと、通常の体外受精/顕微授精と比較して周産期リスクが上昇するかどうか調査したメタアナリシスです。 1990年1月から2022年8月までデータベース(MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Library、Google Scholar)を用いて検索しました。 ヒトのコホート研究・ケースコントロール研究・ランダム化比較試験のみを対象としました。選択過程は2人の研究者が独立して行い、観察研究の質はNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価し、ランダム化比較試験のバイアスの程度を評定するためにCochrane risk-of-bias tool version 2を用いました。プールされたオッズ比および95%信頼区間は、実質的な異質性が生じた場合(I2: 50%以上、P<0.1)にはランダム効果モデルを用いて算出し、それ以外は固定効果モデルを用いました。 結果 TE生検を行った11,469出生児と、通常の体外受精/顕微授精20,438出生児を含む13件の研究が含まれました。早産のオッズ比は、TE生検群に増加しましたが(プールオッズ比 1.12;95%CI 1.03-1.21)、感度解析の結果、差は認められませんでした(オッズ比 0.97;95%CI 0.84-1.11)。低出生体重児リスクは、TE生検群では増加しませんでした(プールオッズ比 1.01;95%CI 0.85-1.20)。その他の周産期転帰(帝王切開分娩、HDP、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、前期破水、妊娠糖尿病、分娩後出血、子宮内胎児発育遅延、巨大児、先天障害児、NICU入院)には、TE生検群と通常体外受精/顕微授精群で差は認められませんでした。さらに、顕微授精、凍結融解胚移植、単一胚移植によるサブグループ解析においても、周産期転帰において差は認められませんでした。
私見
TE生検と妊娠初期妊娠判定のβ-hCG値の低下との関連性が、報告されています。TE生検の影響は妊娠初期に限定されるのかもしれませんね。
過去のコラムも参考になさってみてください。
- 着床前検査は妊娠時のhCG低下や周産期予後に影響を与えるの?( Fertil Steril. 2020)
- 着床前検査(TE生検)後妊娠の周産期予後(Hum Reprod Update. 2023)
- 着床前検査は、周産期予後や幼児期の健康に悪影響があるの?(Hum Reprod. 2023 )
- 着床前検査の母体・新生児リスク(Hum Reprod. 2023)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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