はじめに
2024年米国生殖医学会で発表されていて興味深かった演題についてご紹介します。
Fellow社のMail-in semen analysis、つまり郵送での精液検査の発表が目立ちました。
国が大きくて、精液検査を受けるために受診するのも大変なのが理由かと思っていましたが、それ以外の理由もあるようです。また、男性の生殖医療を担当する医師が足りない状況であるのは我が国と同様のようです。
いくつかの演題を紹介したいのですが、タイトルと結論のみご紹介します。
前回に続いて4つの演題をご紹介します。
研究の紹介
- MAIL-IN SEMEN ANALYSIS: A CONVENIENT AND POTENTIALLY TIME SAVING METHOD OF FERTILITY EVALUATION
結論:郵送での精液検査キットにより、患者は自宅で精液サンプルを採取できます。移動時間が障壁であるとの先行研究に基づき、検査キットは通院の負担を軽減し、経済的な負担も減らすとされています。 - OVER 90% OF FERTILITY PATIENTS COMPLETE MAIL-IN SEMEN ANALYSIS WITHIN 2 MONTHS
結論:82.4%が4週間以内、98.5%が26週間以内に検査完了。郵送キットによる精液検査は、検査の入手方法や地理的位置に関係なく完了率が高いことが示されました。 - MAIL-IN SEMEN ANALYSIS PERFORMED FOLLOWING VASECTOMY REVERSAL IS ASSOCIATED WITH EXCELLENT KIT COMPLETION RATES…
結論:パイプカット後の精管精管吻合術後の男性は、郵送精液検査を2週間以内に高率で完了。人種、学歴、収入に関係なく高い完了率が示されました。 - THE DISTRIBUTION OF FELLOWSHIP TRAINED ANDROLOGISTS IN THE UNITED STATES
結論:米国全土においてアンドロロジストの分布に地域差あり。多くの州では遠隔医療へのアクセスに制限がある状況です。
筆者の意見
精液検査は、医療機関へ赴き予約の必要があるなど、実施のハードルが高いです。特に米国では、評価の順番としても後回しになってしまうことがあるようです。加えて、専門訓練を受けた医師の分布にも地域差があり、精液検査実施には地理的な障壁もあります。
その点、Fellow Healthの精液検査キットは、こうした障壁を解消し、手軽に実施できる精液検査を提供するものと考えられます。
文責:小宮顕(亀田総合病院 泌尿器科部長)
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