はじめに
日本人若年女性80名(婦人科疾患や排卵障害がない)を対象とした「ベビ待ち研究」の結果がでましたので取り上げたいと思います。
ポイント
不妊ではない若年女性では、夫婦生活頻度が高いほど自然妊娠率が上昇し、6か月以内に44%、2年後に74%が妊娠しました。妊娠可能期間の夫婦生活頻度を増やすことが重要そうです。
引用文献
Shoko K, et al. Int. J. Environ. Res. Public Health 2020
論文内容
妊娠の確率が性交頻度、女性年齢、生殖年齢(AMH)、BMIに影響されているかどうかを検討した前向き研究です。最初の子供を妊娠したいと考えている23~34歳の日本人女性80名を対象に最大24週間、月経出血、性交頻度(①排卵6日前から排卵後1日後までの妊娠可能期間の回数、②月経周期中通しての回数、③過去3か月の平均回数の3方法で情報を収集)、排卵、妊娠を記録しています。その他、1年後、2年後の時点で妊娠しているかどうかまでアンケート調査で追跡を行いました。
結果
参加者のうち、44%(35名)が24週(6か月)までに自然妊娠しました。2年後には、74%(59名)の女性が分娩したか、現在妊娠しており、自然妊娠によるものが50%(40名)、不妊治療(タイミング治療や人工授精)によるものが24%(19名)でした。2年後までに、56%(45名)の女性が不妊クリニックで治療を開始していました。
すべてのパターンの性交頻度(①排卵6日前から排卵後1日後までの妊娠可能期間の回数、②月経周期中通しての回数、③過去3か月の平均回数の3方法で情報を収集)が高いほど、追跡調査の24週までに妊娠する確率が高くなっていました(OR 1.23、95%CI 1.02、1.47)。追跡した319周期中、①の妊娠可能期間に性交をもてなかったという回答が18%もありました。
女性年齢、BMI、AMHは24週時点での妊娠確率とは関連していませんでした。
私見
研究と比較して妊娠する確率は低い傾向にありました(24週以内に累積妊娠率:44%(今回)、60%(デンマーク:1998)、81%(ドイツ:2003))。何故なのでしょうか。
理由の一つとして妊娠可能な時期にタイミングをとれない、頻度が少ないのが原因なのではないかと著者たちは推測しています(今回の研究では一周期あたり3回、過去の同じようなアメリカでの研究では6回でした。)。
確かに性交頻度が少ないのであれば、よりピンポイントにタイミングをとる時期を促せるよう不妊クリニックでタイミング療法をするのも選択肢です。
実際、排卵後の性交頻度は妊娠率をさげるという論文もあるくらいで少なくともプラスに働かないというのが一般的な見解になってきています(今回の論文では月経周期の性交回数が増えると妊娠率が増えるという結果になっていますが、排卵後の性交回数との関連は示されていません)。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。