一般不妊

2025.06.20

PCOS女性の妊孕性と出産年齢に関する縦断的人口ベースコホート研究(Am J Obstet Gynecol. 2025)

はじめに

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は生殖年齢女性における最も一般的な内分泌疾患の一つでありながら、長期的な生殖転帰についての研究は限られています。PCOSは妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの周産期合併症と関連することが知られていますが、出産回数や出産年齢といった基本的な生殖指標に与える影響については、大規模な前向きコホート研究での検討が不足していました。今回、25年間という長期にわたって追跡された大規模人口ベースコホート研究で、PCOS女性の妊孕性と出産年齢について調査した論文をご紹介いたします。

ポイント

PCOS女性は一般的な女性と比較して出産回数が少なく、初回および第2子の出産年齢が高く、高齢出産のリスクが高いことが示されました。

引用文献

Maria Forslund, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025 Jun;232(6):545.e1-545.e10. doi: 10.1016/j.ajog.2024.11.010.

論文内容

生殖期の終わりに達したPCOS女性における出産回数と出産時の母体年齢を比較し、高齢出産に関連する因子を検討することを目的とした、25年間の前向き追跡による大規模な人口ベースコホート研究です。一般人口から無作為に選ばれ、オーストラリア女性健康縦断研究に組み入れられた女性を対象に、1996年(18~23歳)から2021年(43~48歳)まで約3年ごとに評価を行いました。自己申告によるPCOS診断ありの女性981名と診断なしの女性13,266名を比較しました。

結果

全体の9.9%の女性が43~48歳時点でPCOSを有していると報告しました。PCOS女性は対照群と比較して出産回数が少なく(1.7±1.3回 vs 1.9±1.2回、P<.001)、未出産の割合が高くなっていました(23% vs 18%、P=.003)。PCOS女性では初回出産年齢(29.5±5.5歳 vs 28.8±5.5歳、P<.001)および第2子出産年齢(32.1±5.2歳 vs 31.1±5.0歳、P<.001)が高くなっていました。PCOSは初回出産時の高齢出産(35歳以上)のオッズ比増加と関連しており、調整オッズ比は1.40(95%CI 1.10-1.80)でした。また、妊娠糖尿病のオッズ比も増加していました(aOR 3.90、95%CI 2.99-5.10)。PCOS群内の解析では、PCOSの診断が遅れた女性では高齢出産のオッズ比がさらに高くなっていました(aOR 1.98、95%CI 1.22-3.22)。

私見

この報告 ほぼ一ページです。それで、皆を説得させられる大規模人口ベースコホート研究は素晴らしいですね。PCOS女性の出産回数が少なく、出産年齢が高いという結果は、これまでの横断的研究や小規模な観察研究の結果と一致しており、PCOSが女性の生殖ライフサイクル全体に与える影響の大きさを示しています。(Forslund M, et al. Acta Obstet Gynecol Scand 2019;98:320–6.、West S, et al. Human Reprod 2014;29:628–33.、Persson S, et al. Human Reprod 2019;34:2052–60.、Hudecova M, et al. Human Reprod 2009;24:1176–83.、Rees DA, et al. J Clin Endocrinol Metab 2016;101:1664–72.、Joham AE, et al. Human Reprod 2014;29:802–8.)
PCOS診断の遅れが高齢出産リスクをさらに倍増させる、妊娠糖尿病のリスクが約4倍に増加させるという知見はプレコンセプションケアの大事さを感じるばかりです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 中長期予後

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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