
はじめに
第1子をARTにて妊娠・出産に至った後、凍結受精胚が保存されているカップルも一定数いるなか、第2子治療のために治療に戻らない場合はそれなりにあるとされています。不妊カップルの家族計画、不妊治療への再来院率、治療再開後の成功率について現在のエビデンスを統合し、不妊診療における患者中心のケアのあり方を検討することを目的とした総説をご紹介いたします。
ポイント
ART第1子出産後の不妊カップルは一般カップルと比較して家族規模が小さく、第2子のためのART再来院率は25~50%にとどまることが明らかになりました。
引用文献
Letizia Li Piani, et al. Hum Reprod. 2025;00(00):1-10. doi: 10.1093/humrep/deaf239.
論文内容
不妊カップルの家族計画における課題について調査したシステマティックレビューです。PRISMAガイドラインに従い、PubMedとEmbaseデータベースを用いて2025年5月までに英語で発表された研究を対象に包括的検索を実施しました。家族規模、ART再来院率、次子出産の意図に関連する評価項目を報告した観察研究を対象としました。
結果
2495件のスクリーニングから9研究が採択されました。採択された研究の多くはART(IVF/ICSI)で第1子を出産したカップルが対象でしたが、一部には排卵誘発・人工授精での妊娠例や自己申告による不妊カップルも含まれていました。不妊カップルは一貫して、妊孕性のあるカップルと比較して家族規模が小さいことが報告されました。第2子のためのART再来院率は25~50%の範囲であり、これは凍結受精胚を保有している場合でも同様でした。再来院に関連する因子には、若年齢、凍結受精胚の保有、過去の治療特性が含まれました。しかし、感情的、経済的、社会的負担がさらなるART利用を妨げることが多く認められました。
第2子妊娠に対する成功率は様々で、治療戦略や既往歴に応じて累積出生率は38~88%でした。米国での研究では第1周期から第5周期にかけて周期あたりの出生率が34%から27%に低下しました。オーストラリアの研究では、凍結受精胚で治療を再開した女性の累積出生率は61~88%、新規に卵巣刺激・採卵から実施した女性では51~70%でした。
年齢は重要な決定因子であり、35歳未満では再来院率27.6%であったのに対し、40歳以上では18.4%でした。その他の再来院を促進する因子として、凍結受精胚の保有(新たな採卵不要で負担軽減)、第1子治療時の採卵数の多さ(卵巣予備能良好を示唆?)、ICSIの使用(ICSIをしないと妊娠しない男性因子の存在?)、単一胚移植での妊娠達成(胚質良好?双胎リスク回避?)が挙げられました。
私見
第2子のためのART再来院率の低さは、生物学的要因のみならず、心理社会的、経済的、システム的な障壁が複合的に作用していることを示唆しています。特に注目すべき点として、凍結受精胚が保存されている場合でも再来院率が25~50%にとどまることがあります。
先行研究においても同様の報告がされています。欧州の4つのレジストリーを基にした研究(Joffe et al. 2009)では、第1子妊娠に12か月以上を要したカップルは、その後第2子を持たないリスク(OR=1.8、95%CI: 1.58-2.04)、第3子を持たないリスク(OR=1.6、95%CI: 1.35-1.87)がいずれも高いことが示されています。これは第1子妊娠時の大変さが、その後の家族規模全体に影響を及ぼすことを示唆しています。また、社会経済的状態が家族規模に強く影響し、低所得地域のART妊娠女性は、自然妊娠女性と比較して0.83人少ない子供数となる一方、高所得地域では0.43人の差にとどまることが報告されています(Choi et al. 2023)。
我々が認識しないといけないのは、不妊カップルの家族計画通りの中断ならいいのですが、家族規模を大きくしては生活が厳しいと思わせる社会的環境が阻害要因なら少しでも改善していくことが重要だと考えています。
第1子出産後に変わった様々な心理的・環境背景を尊重し、より柔軟で支援的なカウンセリングを提供する場を用意していくことが望ましいのですが、前途多難です。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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