
はじめに
生殖補助医療では、胚移植後の妊娠判定に血清hCG値を使用することが多いです。尿中hCGに比べて早く妊娠を把握することが可能で、定量性があるからです。これまでの研究では、受精胚移植後10日目以降または採卵後14日目以降に妊娠予後が予測されてきましたが、早期段階での予測に関する報告はほとんどありませんでした。今回、凍結融解胚盤胞移植後7日目から11日目における出生を予測するhCGカットオフ値を調査した研究をご紹介いたします。
ポイント
凍結融解胚盤胞移植後7-11日目という早期段階で、血清hCG値により出生予測することが可能そうです。
引用文献
Nobuyuki Kidera, et al. F S Rep. 2025;6:455-61. doi: 10.1016/j.xfre.2025.10.002.
論文内容
凍結融解胚盤胞移植後の出生を血清hCGが予測できる最も早い時点を研究し、凍結融解胚移植後7日目から11日目のhCG値のカットオフ値を決定することを目的とした単一施設のレトロスペクティブコホート研究です。2016年1月から2022年12月の間に施設で実施された18,491周期の凍結融解胚盤移植を調査しました。Day3初期胚と多胎妊娠は、hCG値への影響を考慮し除外しました。主要評価項目は凍結融解胚移植後7日目から11日目における出生を予測するhCG値のカットオフ値で、副次評価項目は同期間における臨床妊娠のhCG値カットオフ値でした。血清hCG濃度の測定はAIA-CL2400とCL AIA-PACK hCG TEST CUP(Tosoh Corporation)を使用して実施されました。
対象は、Day5およびDay6の胚盤胞期胚で、1個または2個移植された症例を含み、IVFおよびICSIを含んでいます。自然周期凍結融解胚移植およびホルモン調整周期凍結融解胚移植において移植しています。臨床的妊娠は経腟超音波検査で検出された胎囊の存在として定義され、出生は妊娠22週以降の分娩として定義されました。
結果
血清hCG測定日別の症例数は、7日目194例、8日目1,139例、9日目6,879例、10日目8,691例、11日目1,588例でした。母体年齢の中央値(IQR)は、7日目37歳(31-43歳)、8日目37歳(30-44歳)、9日目37歳(31-43歳)、10日目37歳(31-43歳)、11日目38歳(32-44歳)でした。臨床的妊娠率は7日目46.9%、8日目43.9%、9日目42.5%、10日目43.1%、11日目43.7%で、出生率は7日目39.1%、8日目32.5%、9日目30.5%、10日目31.6%、11日目31.4%でした。
凍結融解胚盤胞移植後の血清hCG値と出生との間のROC分析により、移植後7日目、8日目、9日目、10日目、11日目のAUC値はそれぞれ0.962、0.958、0.954、0.957、0.954を示しました(すべてP<0.001)。凍結融解胚盤胞移植後7日目から11日目の血清hCGカットオフ値は、それぞれ31.05 mIU/mL(感度0.961、特異度0.855、Youden index 0.816)、46.6 mIU/mL(感度0.960、特異度0.848、Youden index 0.809)、72.05 mIU/mL(感度0.960、特異度0.859、Youden index 0.819)、95.4 mIU/mL(感度0.977、特異度0.859、Youden index 0.836)、159.9 mIU/mL(感度0.970、特異度0.872、Youden index 0.842)でした。移植後7日目に血清hCGが31.05 mIU/mL以上であれば出生の確率は81.1%、8日目に46.6 mIU/mL以上で75.4%、9日目に72.05 mIU/mL以上で74.6%、10日目に95.4 mIU/mL以上で75.9%、11日目に159.9 mIU/mL以上で73.9%でした。対照的に、血清hCG値がこれらの閾値を下回る場合、確率は著しく低く、7日目で2.88%、8日目で2.24%、9日目で2.01%、10日目で1.24%、11日目で1.55%でした。
凍結融解胚移植後の臨床的妊娠を予測する血清hCG値のROC分析により、
移植後7日目、8日目、9日目、10日目、11日目のAUC値はそれぞれ0.990、0.989、0.993、0.995、0.998を示しました(すべてP<0.001)。移植後7日目から11日目の臨床的妊娠の血清hCGカットオフ値は、それぞれ21.35 mIU/mL(感度0.978、特異度0.942、Youden index 0.920)、30.0 mIU/mL(感度0.952、特異度0.939、Youden index 0.891)、40.35 mIU/mL(感度0.972、特異度0.951、Youden index 0.922)、58.0 mIU/mL(感度0.969、特異度0.970、Youden index 0.938)、64.8 mIU/mL(感度0.972、特異度0.982、Youden index 0.955)でした。
出生に関連する因子の解析では、全18,491症例(35例の人工妊娠中絶を除く)において、単変量解析で母体年齢、帝王切開歴、子宮筋腫核出術歴、Day5胚盤胞移植、初回凍結融解胚移植、妊娠歴、グレードAの栄養外胚葉(TE)を持つ胚盤胞、グレードAの内細胞塊(ICM)を持つ胚盤胞がすべて有意に(P<0.001)出生と関連していました。ホルモン調整周期凍結融解胚移植、子宮内膜手術歴、不妊原因(男性因子、卵管因子、子宮内膜症、原因不明不妊)には有意差が認められませんでした。ロジスティック回帰分析では、母体年齢(P<0.001、95%CI:0.860-0.875)と帝王切開歴(P<0.001、95%CI:0.427-0.518)が出生率と有意に負の関連を示し、Day5胚盤胞移植(P<0.001、95%CI:1.682-2.017)、初回凍結融解胚移植(P=0.001、95%CI:1.055-1.221)、分娩歴(P<0.001、95%CI:1.248-1.450)、グレードAのTE(P<0.001、95%CI:2.002-2.368)、グレードAのICM(P<0.001、95%CI:1.228-1.472)が有意に出生率と正の関連を示しました。
私見
血清hCG値は検査会社により測定できる下限値が異なります。今回の検証では血清hCG 1 mIU/mL以上をカットオフとしています。
出生予測と臨床妊娠予測が共に高い値で出ています。年齢、hCG別の流産率もわかってくるとより面白いですね。
妊娠判定時の血清hCG解釈は低いからダメなわけではなく、低い場合でも上昇率などと合わせて評価をしていきます。着床をしている以上、早期治療終結を検討するのではなく、hCGのその後の変化を観察していくことが重要だと考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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