体外受精

2026.01.28

培養液有効期限内使用時期は体外受精成績に影響する?(Hum Reprod. 2025)

はじめに

培養液の組成、pH、浸透圧は培養液の品質を示す重要な指標として認識されていますが、培養液の保存期間に関する研究は乏しく、メーカー間で使用期限が異なり、ほとんどが17-26週間となっています。これらの違いは、体外受精成績に影響を与える可能性があるだけでなく、費用面に影響します。今回、有効期限1年のシングルステップ培養液の保存期間が体外受精の成績に影響を与えるかどうかを評価した大規模後方視的研究をご紹介いたします。

ポイント

有効期限1年のシングルステップ培養液の保存期間は、受精胚の発育、累積出生率、出生体重や早産などの新生児予後と関連していませんでした。ただし、メーカーによる異なる可能性、中の成分自体は微妙に変化している可能性がありますので日々モニターが重要となってきます。

引用文献

Morbeck DE, et al. Hum Reprod. 2025;00(00):1-9. doi: 10.1093/humrep/deaf236.

論文内容

有効期限1年のシングルステップ培養液の保存期間が、体外受精における受精胚発育、妊娠予後、または出生体重に影響を与えるかどうかを検討することを目的とした後方視的多施設共同研究です。2020年10月から2023年12月にオーストラリアの8クリニックにおける6330名の患者から得られた9680周期のIVF/ICSI周期を対象としました。対象は、1個以上の受精卵(2PN)があり、培養液の製造日が判明している自己卵子周期としました。融解卵子・受精胚を使用した周期や非標準的な移植日の周期は除外しました。すべての受精胚はタイムラプスインキュベーターを用いてシングルステップ培養液で培養しました。受精胚発育、累積妊娠率、出生率、早産率、単胎児の出生体重について、未調整および調整回帰モデル、ならびに同一患者内の反復測定を考慮した一般化推定方程式モデルを用いて解析しました。
培養液は、到着後は冷蔵保存(2-8℃)、開封後は無菌操作で複数回アクセス、開封後最大2週間使用可能(ただし有効期限内に限る)、培養液は小分けにせず元のボトルから使用としました。

結果

使用時の培養液の保存期間は38日から365日の範囲(平均±SD:190±61日)でした。培養液の保存期間と受精胚発育の指標との間に統計学的に有意な関連は認められず、5日目/6日目の胚盤胞率(P=0.389)および5日目/6日目の利用可能胚盤胞率(P=0.255)に有意差はありませんでした。同様に、培養液の保存期間は、調整モデルにおいて臨床妊娠率(P=0.669)、継続妊娠率(P=0.986)、出生率(P=0.257)を含む累積周期成績と関連していませんでした。PGT周期および新鮮胚移植を含むサブグループ解析でも、一貫した結果が得られました。1070例の単胎出生において、培養液の保存期間は早産(P=0.818)または出生体重(P=0.161)と関連していませんでした。

私見

今回の結果は先行研究(Kleijkers et al. Hum Reprod, 2015)と、受精胚発育および妊娠予後に関して一致した知見を示しました。
Tarahomiらは15種類の市販培養液の組成と安定性を詳細に解析し、培養液間で組成が大きく異なること、さらに保存期間中および培養中に多くの成分濃度が変化することを報告しています(Tarahomi et al. Hum Reprod, 2019)。彼らの研究では、保存により37成分中17成分が、培養により13成分が有意に変化し、特にマグネシウム、クロライド、リン酸塩、アルブミン、複数のアミノ酸の濃度変化が認められました。また、D-乳酸の存在やヒト肝酵素の検出など、予期しない成分の存在も明らかにされました。本研究で使用されたGeriシングルステップ培養液においても、保存期間中に成分組成が変化している可能性は考えられますが、本研究の結果から、そのような変化があったとしても受精胚発育や臨床成績に影響を与えるほどではないことが示唆されます。ただし、Tarahomiらの研究が示すように、培養液間で組成の安定性には大きなばらつきがあるため、本研究の結論が他の培養液にも当てはまるかどうかは不明です。
ラボ試薬の管理は多岐にわたりますが、廃棄削減ふくめた多角的管理が重要だと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 培養液

# 費用対効果

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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