治療予後・その他

2026.04.01

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

はじめに

体外受精と人工授精の出生転帰関連を検討する際、不妊そのものの影響と治療そのものの影響を分離することが困難です。多くの研究では一般集団を対照群としていますが、社会経済的背景や遺伝的要因などの交絡因子が残ってしまいます。今回の研究では、同一カップルの子どもを対照とする同胞解析を用いて、体外受精または人工授精児の早産、低出生体重、SGA、LGA、先天奇形リスクを評価しました。

ポイント

体外受精単胎児では自然妊娠兄弟と比較して早産・低出生体重・LGA・先天奇形リスクがやや増加しますが、絶対差は小さく、不妊の背景に加え治療関連因子の関与が示唆されます。人工授精単胎児では早産・LGA・先天奇形の有意な上昇は認められませんでした。

引用文献

Reeder MR, et al. Fertil Steril. 2026 Feb;125(2):326-337. doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.08.027.

論文内容

体外受精または人工授精で妊娠した児と、同一カップルから自然妊娠で出生した兄弟との出生転帰を比較することを目的としたレトロスペクティブ同胞コホート研究です。1999年から2018年にユタ大学生殖医療センターで体外受精(ICSI併用・非併用)または人工授精を受けた18~45歳のカップルの出生児と、同一両親から不妊治療なしで出生した兄弟(1985~2018年出生)を対象としました。ドナー卵子・精子・受精胚、代理母妊娠、死産、流産、在胎24週未満は除外されました。主要解析は単胎児に限定され、体外受精児460名、人工授精児666名、自然妊娠兄弟1,579名、計2,705名が対象となりました。Utah Population Databaseを介して治療記録、出生証明書、Utah Birth Defect Networkのデータがリンクされました。きょうだい間の相関を考慮した混合効果モデルおよびロバスト分散推定を用いた修正ポアソン回帰が使用されました。

結果

単胎児において、体外受精児の平均在胎週数は自然妊娠兄弟より約0.5週短く(調整β = −0.4; 95%CI, −0.6 to −0.3)、出生体重は72.1g低い結果でした(95%CI, −118.8 to −25.4)。人工授精児の出生体重も55.8g低い結果でした(95%CI, −95.6 to −15.9)。早産率は体外受精児11.1%、人工授精児8.7%、自然妊娠兄弟6.8%であり、母体年齢、児の性別、出生年、既往妊娠、出生順位で調整後、体外受精児の早産リスクは有意に上昇しました(aRR, 1.6; 95%CI, 1.2–2.2; 絶対差4.3%)。LGAについても体外受精児で上昇が認められました(体外受精 9.1% vs. 自然妊娠 5.9%; aRR, 1.8; 95%CI, 1.2–2.5; 絶対差3.2%)。先天奇形については体外受精児で1.9倍のリスク上昇が観察されました(aRR, 1.9; 95%CI, 1.0–3.8; 絶対差2.3%)。先天奇形の中では心血管系異常が最も多く、次いで筋骨格系および泌尿生殖器系の異常でした。SGAについては体外受精・人工授精いずれも有意な上昇は認められませんでした。人工授精単胎児では早産・LGA・先天奇形の有意な上昇は認められませんでした。
多胎を含む全出生の解析では、体外受精児は約1.5週早く出生し(調整β = −1.3; 95%CI, −1.5 to −1.2)、出生体重は348g低く(95%CI, −392.4 to −303.5)、早産リスクも大きく上昇しました(aRR, 3.9; 95%CI, 3.2–4.7)。

私見

体外受精単胎児における早産リスクの上昇(aRR 1.6)は、他の同胞研究と概ね一致しています。デンマークの大規模同胞研究ではaOR 1.3(Henningsen AK, et al. Fertil Steril. 2011)、ノルウェーの研究ではaOR 1.2(Romundstad LB, et al. Lancet. 2008)、米国の別の研究ではaOR 1.63(Dhalwani NN, et al. Fertil Steril. 2016)と報告されています。一方、オランダからの報告では自然発症早産のaORが0.78、医原性早産のaORが0.51と低下を示しており(Seggers J, et al. Fertil Steril. 2016)、患者集団の違いや胚移植方法の違いにより結果が異なる可能性があります。 
人工授精については、非同胞研究では早産リスクの上昇が報告されていますが(、本研究を含む同胞解析では早産の有意な上昇は認められず、不妊そのものの影響が大きい可能性が示唆されます。 

先天奇形に関しては、本研究のaRR 1.9は、非同胞研究の報告と方向性が一致しています(Olson CK, et al. Fertil Steril. 2005; Boulet SL, et al. JAMA Pediatr. 2016)。心血管系異常が最多であった点も過去の報告と一致しています(Reefhuis J, et al. Hum Reprod. 2009)。他の同胞研究ではaOR 1.32と報告されています。 
人工授精と先天奇形の関連は一貫していません(Chaabane S, et al. Birth Defects Res B Dev Reprod Toxicol. 2016; Sagot P, et al. Hum Reprod. 2012; Fauque P, et al. Hum Reprod. 2021)。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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